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第8話 言葉の神格体——ナックフォージャー——
それからノックが鳴ったのは三十分が経った頃だった。俺はベッドから起き上がり、ドアへと足を進める。
「はい」
ドアが開いて目に入ったのは白い円形の帽子を被った少年だった。
「入るよ。さっさと終わらせたいんだ」
「あぁ……」
部屋に勝手に入るタイプだ。ヴェラットが言っていた通り、一瞬で厄介だと分かった。
少年は椅子に座り、俺はベッドに座る。少年はそれを確認すると口を開いた。
「ボクはナックフォージャー、"後継"の神格体だ。僕の力は尊敬する神格体の力を少しだけ使うことができる。神力は僕以外の神格体が死んだ時、その力を引き継いで使うことができる。それだけ」
「俺は――」
「君のことはもう知ってる。ココノエヤト、十八歳で性別は男、血液型はA型、身長は一七二センチで体重は五十六キロ、低予算アダルトアニメの喘ぎ声ができる」
「おい、ちょっと待て」
イーピ、余計なことを吹き込みやがって。コイツはコイツで真剣な表情をして言っているから冗談だと気づいていないと分かる。
「できないの?」
「できるできないじゃなくて、していない。イーピの妄言だ」
「録音を持っていると言っていたよ。ボクは聞いていないけど」
果たしてなんで録音をしていたのか。高性能なのはわかったが、やっぱりアイツもまともには程遠いな。
「まぁ、いいよそんなの。ボクのことは好きに呼んでくれ」
ナックフォージャー……ナックと呼ぶか。
ナックは生意気というより知能が高い子供が適切な表現だ。白い卵のような帽子を被っているのが特徴的で、所々から茶色の髪が覗いている。顔や体つきもまだ幼さが残っていて、年齢をつけるなら十五歳、身長も一五〇前半といったところだろう。
白色のローブを羽織っていて丸みを帯びた同色のパンツを履いている。帽子をツバの長いとんがり帽子にしたら創作に出てくる魔法使いのような服装で、手に持っている本も実にそれっぽい。
「じゃあボクはもう行くから」
するとナックは部屋から出て行ってしまった。
「……まぁ、手間はかからなかったな」
何はともあれこれで俺の記憶違いがなければ全員。どうすればいいか分からないが、いずれイトかエイレネが訪ねてくるだろう。
ようやく俺がこれからどうするかを知れる。それによって俺は身の振り方を考えなければならない。
俺は勝手に動くことはせず、ベッドで寝て待っていることにした。
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