第1話 身内は騙せない

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第1話 身内は騙せない

「お前は一体何者だ!」  突然、城内に響く男性の声。きっちりとした身なりに整った顔、金髪碧眼の男性に怒鳴られている同じ金髪碧眼の女性。 「えっえっ、お兄様、妹のカレンですよ」 「嘘を吐け! カレンがそのようにお淑やかなわけがないだろう!」  ふわりとしたドレスに胸の真後ろ辺りまで伸びるストレートの金髪。カレンと名乗った女性に、男性は更に怒鳴りつけていく。  しかし、兄に「お淑やかではない」と言われるカレンとは、一体どんな女性なのやら。 (えー、確かにあの動きはただ者ではないとは思ったけど、まさか普段から常識はずれな人だったの?!)  怒鳴られている女性は、どうも混乱してきているようだ。  どうにも怒号に耐えられなくなった女性は、 「うう、降参です、お兄様」  と両手を上げて参りましたのポーズを取る。 「お前にお兄様と呼ばれる筋合いはない。正体を現せ!」  それでもなお怒鳴り続ける男性。この様子に、女性は周りをきょろきょろと見る。男性の声に人が集まり始めていた。 「お兄様、場所を変えましょう。カレン様の事についてのお話もございますし、ちょっと人に聞かれるわけには参りませんから」 「やましい事があるのか?」 「いえ、カレン様との約束なのです。下手な事をすれば私の妹の命にも関わりますので、どうかご容赦を」  泣きそうな顔で男性を見ると、さすがに男性は困ったような反応を見せる。 「くっ、なんて卑怯な……。分かった、人気の無い場所へ移動すればいいんだな」 「はい、お願い致します」  さすがに女性に泣かれてしまっては、男性もうろたえるしかなかった。そんなわけで金髪碧眼の男女二人は、そそくさと場所を変える事となった。  やって来たのは、王族だけが入れる部屋だった。 「ここなら邪魔も入るまい。さぁ、お前は何者だ?」  男性が凄んでくる。もうばれてるのは間違いないので、女性は開き直った。 「なっ?!」  次の瞬間、男性は驚くべき光景を見た。なんと、女性の手がどろりと形を変えたではないか。一体どういう事なのか。 「私はカレン様の影武者を務める事になったアサシンスライムで、ゼリアと申します。これには深いわけがございますので、お聞き願えますでしょうか、アレス様」  なんと、腕は溶けたのではなく、本来の姿に戻っただけだったようだ。だが、アレスと呼ばれた男性は、驚きで固まったまままだ戻れそうになかった。 「アレス様?」  カレン、もといゼリアが覗き込むと、ようやくアレスは意識を取り戻した。この時、ゼリアのスライム化した腕は人間の腕に戻っていた。 「アサシンスライムだと?! 魔物がどうしてこの城で妹のふりをする!」  アレスは混乱している。 「それを今からお話ししますので、どうかお聞き下さい」  ゼリアは静かにこうなった経緯を話し始めた。
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