割れた中身

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 主任、先輩とのランチタイムに、部長に言われたことを話した。  大岩先輩は頬杖をつく。 「確かに別人みたいだよな」 「よかった……んでしょうか、これで」 「よかったもなにも、どうしようもないだろ。訳わかんないんだから」 「……」  たまごが割れ、近しい人にドロドロが落ちる事例は増え続けている。 「ドロドロが落ちた人は、たまごびとから恨まれている」という仮説がネット上で主流になっている。ドロドロに全身を覆われた人達は気絶した後、たまごびとの記憶をかいま見ているらしい。極端に大人しくなったり、憔悴(しょうすい)している。   「てことは、私のたまごの中身は旦那に落ちるのかしら」  小石主任はにやり、と笑う。 「え」  私は主任のたまごを見る。あれからヒビは増えていない。 「旦那が最近優しいのも、中身をかぶりたくないから、かもね」 「純粋に仲良くしたいんじゃないですか」 「どうだか」  たまごは消えた。部長が私の記憶を見て、丸くなった。仕事しやすくなった。  でも、これでいいんだろうか?  結局、誰の仕業なの、これ?  目的は何?  私のたまごが割れる直前、「いっそ永野部長の頭に落ちればいいのに」と思ったように。  いつか私の頭にも突然、ドロドロが降ってくるんだろうか。  誰かから、恨みを買って。
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