17人が本棚に入れています
本棚に追加
主任、先輩とのランチタイムに、部長に言われたことを話した。
大岩先輩は頬杖をつく。
「確かに別人みたいだよな」
「よかった……んでしょうか、これで」
「よかったもなにも、どうしようもないだろ。訳わかんないんだから」
「……」
たまごが割れ、近しい人にドロドロが落ちる事例は増え続けている。
「ドロドロが落ちた人は、たまごびとから恨まれている」という仮説がネット上で主流になっている。ドロドロに全身を覆われた人達は気絶した後、たまごびとの記憶をかいま見ているらしい。極端に大人しくなったり、憔悴している。
「てことは、私のたまごの中身は旦那に落ちるのかしら」
小石主任はにやり、と笑う。
「え」
私は主任のたまごを見る。あれからヒビは増えていない。
「旦那が最近優しいのも、中身をかぶりたくないから、かもね」
「純粋に仲良くしたいんじゃないですか」
「どうだか」
たまごは消えた。部長が私の記憶を見て、丸くなった。仕事しやすくなった。
でも、これでいいんだろうか?
結局、誰の仕業なの、これ?
目的は何?
私のたまごが割れる直前、「いっそ永野部長の頭に落ちればいいのに」と思ったように。
いつか私の頭にも突然、ドロドロが降ってくるんだろうか。
誰かから、恨みを買って。
最初のコメントを投稿しよう!