出勤

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出勤

 マンションを出てから「休むって選択肢もあったかな」と思ったけど、時すでに遅し。 「なにあれ……」  周囲から視線が刺さるのを感じる。ひそひそ声で奥様方から「なんかのコスプレかしら?」と言われるのはまだいい方で。 「おねえちゃん、たまご、ついてるー!」  容赦なく響き渡る幼稚園生の声が私にダメージを与える。  どうにかしたいけど、頭上のたまごには触れない。  その上、手が阿波踊りみたいになってますます注目を集めてしまう。  ああ、こんなんだから職場でも「天然の三羽(みわ)ちゃん」とか言われるんだよな。  早くやり過ごそうと競歩なみのスピードで最寄りに着く。 「たまご……」 「たまごだ……」 「あれどうやって浮いてるの?」 「手品?」    ホームに並んで待っていると、 「あの、頭の上にたまごが」  ご丁寧に後ろの人が指摘してくれた。  返す刀で「知ってますぅ」と答えて、電車に乗り込む。  どこにいても突き刺さる視線。  溜息をつく。  いっそ、消えてしまいたい。
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