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考えていたこと
「あの、私ずっと考えてたんですけど……」
「うん?」
小石主任も足を止めて、私を見る。
心配そうな瞳。可愛がってくれて、ミスもフォローしてくれる頼もしい上司。
そんな人にこれ以上、気を遣わせるのは悪い気がして、私は言いかけた言葉を飲み込んだ。
「……やっぱ、やめときます」
「ええ?」
「ほんと大したことないんで。忘れてください」
そのまま流して会社に入ろうとしたけど。
「ちょっと三羽ちゃん」
後ろから手をつかまれる。
「そこまで言っておいて言わないのはナシよ」
「でも……」
「いつも言ってるでしょ、ささいなことでも早く報告しなさいって。
判断するのはこっちの役目なんだから」
小石主任は私の手をぐい、と引き、物陰に連れて行く。
壁に追い詰められる私。ばち、と真正面から合う視線。
「私ってそんなに頼りない先輩かしら」
「あ……」
「ぴしり」と音がして、小岩主任のたまごにヒビが入った。
にっこり微笑んでいるのに、目が笑っていない。
頭上に浮かぶたまごの色は可愛らしいのに、それすら迫力を増しているようで。
「吐け」「はい」
私は折れた。
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