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私達は会社近くの公園のベンチに座った。
二人してカフェオレのホットを飲む。まろやかな甘さが、口を開く手助けをしてくれた。
「たまごびとになる前日、実は出社したくないな、って思ってました。ほら、先週のことで」
「ああ、三羽ちゃんやらかしちゃったもんねぇ」
先週、私は大きなミスをした。
「土日のイベントに必要な資材が何度数えても足りない」と現地の担当社員から連絡が入った。原因は私の発注ミスで、500部必要な冊子を50部しか頼んでいなかったのだ。近くの支店の在庫を問い合わせて、小石主任、大岩先輩と手分けして取りにいって……。
結果、イベントには間に合ったけど、他の仕事が押して、二人を残業させてしまった。
「俺らもチェックすべきだったな」と先輩はフォローしてくれたけど、部長は帰り際に「お前のせいでまた余計な仕事が増えた」と舌打ちして、手伝わずに先に帰っていった。
思い出しながら頭の上でまた、ぴしぴしとたまごにヒビが入る。
「いっぱいいっぱいになって、余裕がなくって。そういうのが原因になったのかな、って」
「その感情が引き金になったってこと?」
「思い当たる節、ありませんか?」
小石主任は頬に手を当てる。
しばらく沈黙。
「まあ、でも小石主任がいっぱいいっぱいになるなんてそんな」
「……あるわよ」
「え?」
私は目をぱちくりさせた。
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