出現

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出現

 起きたら頭の上にたまごがあった。  それまで白い壁と同化していたけど、コンタクトをはめて、視界がクリアになってから気づいた。 「あれ?」  鏡を見て、たまごに手をやる。そこにはなにもない。  だけど、鏡には冗談みたいにたまごが映ってて、私の手はたまごの輪郭に合わせて途切れている。  まるでたまごの幽霊みたい。 「んん?」  上を見る。  たまごの底がある。  私の頭上、10センチくらいの高さ。大きくて、動物園で見たダチョウのたまごに似ている。  今割れたら、中身が私の頭に「ぱしゃ」っとかかるんじゃないだろうか。こわい。  私が動くと、たまごも右に左に動く。  くるくる回ると、頭上でたまごもくるくる回る。  なんだろう、これ。 「夢かな……」  それにしちゃ、さっき顔を洗った時の水の冷たさとか、やけにリアルだったけど。ほっぺたをつねっても痛いし。  もう一度寝て起きたら消えてる、なんてワンチャンあるかも、と思ったけどすでに時間が押していた。出社するしかない。夢でも遅刻は嫌だ。ただでさえミスが多くて肩身の狭い思いをしているんだから。  いつもの情報番組をチラ見しながら、いつもの朝食。  だけど、頭上にたまご。  出る前にもう1回鏡を見たけど、やっぱりたまご。 「急に割れたりしないよね?」  もう一回手で触れないことを確認して、私は家を出た。
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