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「みく」 と先生に声をかけられたので、 「はい」 と返事をして、先生の方を見ると、 「少し休みなさい」 と言われたので、弓を置いて道場の壁際に並ぶ椅子に座る。 (なんでしょうたが出てくるんだ) と思いながら、他の人が射る姿をぼーと見ていると、 「みく、悩み事があるのかい?」 と隣りの椅子に座った先生に聞かれたので、 「ありません」 と答えると、 「弓を射る間に考えごとしているだろう」 と言われたので、どきっとしてしまった。 「弓を射る間だけでも集中しないとね」 と言われ、 「すいません」 と私が言うと、 「動作とか見ていたらいつものみくと違ったからね」 と先生が笑顔で言ったので、 「分かるのですか?」 と私が聞くと、 「何年やっていると思っているんだ」 と笑いながら答え、 「ほんの数分だけ集中してごらん」 と言った。 「分かりました」 と私は言って、頭を下げ、 「練習に戻ります」 と席を立つと、 「みくのいつもの素晴らしい矢を見せてくれ」 と先生は、笑顔で言った。
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