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ころろん……
満開の桜の花の下、誰かの足でけとばされて、小石のペッポは今日何度目かわからないため息をつきました。
「チェッ、みんな上ばっかり見て歩くから」
今日の公園はお花見に来た人でいっぱいです。みんな頭の上の桜の花を見ながら歩くので、足元に転がっている小石に気が付く人なんていません。
「まあ、かわいい」
ふいに空から降ってきた声に、ペッポはびっくりして見上げました。若い女の人がこちらを見て、にっこり笑っています。ペッポは、胸がドキドキしました。
その人は、後ろを振り返って笑いました。
「ほら、花びらがいっぱい」
「上だけじゃなくて下にも花がいっぱいだね」
やっぱり、みんな小石になんか気もとめずに歩いて行ってしまいます。
「桜なんて大嫌いだ」
ペッポがふくれっ面でつぶやくと、そばに落ちていた桜の小枝が、くすっと笑いました。
「ふん」
「私、ルーっていうのよ。あなたは?」
桜の枝はそっとささやきます。
「ペッポだよ」
ペッポは照れくさくて、ぶっきらぼうに答えました。
「私、昨日の大風で枝がおれて落ちてしまったの」
ルーは寂しそうに空を見上げました。ルーの枝先にはまだ固いつぼみがいくつもついていました。ペッポはルーのことが少しかわいそうになりました。
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