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7年前ビターネム城――。
「離せよ!」
縄にとらわれ、首根っこをつかまれた少年はそう叫んで身をよじった。しかしそう簡単にどうにかできるわけがなく、彼はいとも簡単に上官たちの前に引っ立てられる。
「お前が養成所で詐欺を働いているギラムか。なんともまあ濁った目をしている」
「うるせぇ」
汚れた衣服、ボサボサの髪。少年――ギラムは騎士養成所に入れられた人間とは思えない様だった。
「……俺は金を稼いだだけだ。悪いのは騙されるほうだろ!」
「おや、こやつは性根までひん曲がっているのか。厳刑に処してやる」
上官――ビターネム王国の将軍であるメディセデスはご自慢の口ひげを触りながらおだやかに言った。
その時だった、コツコツというこぎみの良い足音と共に一人の少女が姿を現したのだ。
ギラムはあれほど美しいものを今までに見たことがなかった。陶器のような白い肌に美しいブロンドヘアと青い瞳。作り物のようなその少女は周囲の抑止も聞かず、だまって薄汚れた少年に近づく。
そして少女はギラムの顔をじっと見て「お前は……」と低い声音でつぶやいた。
「お前は私と同じ目をしている」
愛を知らない濁った瞳だ、と彼女はほんのりと口の端をあげて言った。寂しそうな笑顔だと思った。
それがギラムと女王ラーナの出会いである。
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