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2.失恋の記憶
幼馴染だった僕たちは、昔からいつも一緒だった。
”桜良”という名前の通り、彼女は本当に桜のような子だった。
笑った顔が満開に咲き誇る桜のように綺麗で、普段は強気なのに、ふいに見せる寂しそうな顔には儚く散る花びらみたいな可憐さがあった。
小学校の低学年くらいから、僕はずっと近くにいた桜良に想いを寄せていた。
その気持ちを伝えなくてもとくに焦りを感じなかったのは、桜良に恋人ができたことはなかったし、できる気配もなかったからだ。
もちろん、好きな人すらもいないようだった。
それに僕は、桜良にとって唯一仲の良い男友達だったし、僕たちの中には誰にも壊せない、何か特別な絆があると信じていたから。
べつに根拠なんてなかったけど、僕が桜良のことが好きなように、桜良も僕のことを好きなような気さえしていた。
世間知らずで未熟だったバカな僕は、このまま大人になって、いつか自然とくっついて結婚するだろう、なんて本気で思っていたのだ。
そんな僕たちの関係は、中学の卒業式を目前に控えた春の夜、突然終わりを迎えた。
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