2.失恋の記憶

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「今から、誰にも言ったことのないこと、(まこと)に言うね。……真だから、言うね」  変に改まったその口調がおかしくて、俺は思わず笑う。 「なんだよ、早く言ってよ」  彼女は軽く咳払いをしてから、前を見たまま言った。 「私、女優になりたいんだ」 「……女優?」 「……うん。小さい頃から、憧れてて。高校生になったら、オーディションとか受けてみる、つもり」  小さい声ながらも、やけにはきはきとしたその言葉はよく聞き取ることができた。  桜を照らしたライトアップのせいか、彼女の頬がなんとなく赤らんでいるように見えた。 「マジか。そんな夢あったんだ、知らなかった」 「笑わないでね」 「笑わないよ!応援する」 「本当?ありがとう!」  やっと僕の顔をちゃんと見た彼女は、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべていた。 「有名になったら、サインちょうだいよ」 「当たり前!」  誰にも話したことのなかった夢を、僕にだけ教えてくれた。  それだけで僕は、胸が一杯になった。  ……それなのに。
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