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時空を超えて
その日、正志は久々に会う高校時代の友人と、街で待ち合わせをしていた。
退屈そうに、コンビニの前に設置されている灰皿の前で、タバコを吹かしている。
女性とのデートでもないのに、なんとなく服装選びに少し手間取ってしまった。相手が男でも何気に落ち着かないものだ。
待ち合わせ時間にはあと五分程度か。正志は周辺に目を泳がせていた。少し屈伸などもしてみる。
「ちょお早よ着いてもたな。アイツどんなカッコしてきよんのやろ。四方山のやつ抜けてるからな。軽いメシでも礼服着てきよんちゃうか」
正志がボケ〜っと見回していると、戦国時代の甲冑に身を包んだ武士が、重たそうな足取りでガシャンガシャンと音を立てながら、こちらへ近づいて来る。腰には長剣を佩いている。
「怖・・・なんやあれ」
その武士はどんどんこちらへ向かってくると、「お〜い」と手甲も装備した手を振っている。正志はとっさに、後ろに誰かいるのか確認するが、彼の周辺には特に誰もいない。
「お〜い、マサやん。マサやんやろ」
正志は、ビクッと身体を跳ね上がらせる。武士に知り合いなどいるはずがない。戦国武士は兜をずらして素顔を見せる。
「おう、待ったか? 久っしぶりやな〜。なんや? 何ポカ〜ンとしてんねん。俺やん」
「なんやてなんや? お前・・・四方山か?」
「おん。それにしても久・・・」
「待てて」
「なんやねん?」
「なんやねんやあらへんがな。お前なんやその格好」
「格好って・・・? 服?」
「服ちゃうやん。鎧やん。なんでそんなもん着てんねん」
正志は思わず半笑いでツッコむが、四方山は心底不思議そうにしている。
「なんでて・・・。裸で来たらおかしいやろ」
「待てや!」
「なんや? 会うて早々なんやねんお前は」
「裸とかそういう問題ちゃうねん。な? 着てる・・・というかその・・・・・・身に纏ってるものがおかしいねん」
「服?」
「ちゃうて!」
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