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本能寺が変?
ほどなく目的のメイド喫茶に近づくと、チリンチリンと鈴を鳴らしてドアを開く。
「お帰りなさいませご主人様っ!」
ひらひらスカートのメイドが手でハートを作って出迎えてくれる。正志と武士はテーブル席に通される。絵面がおかしい。正志は、自分のほうが異端に思えてくる。
「お前何頼む?」
武士に尋ねると、武士は迷うことなく言った。
「キャラメルラテアートやな」
「シャレたもん頼みよって。じゃあ、それとコーラ一つお願いします」
メイドはペコリと一礼して、注文を取って厨房に入っていく。
何故メイドは四方山の出立ちに疑問を抱かないのか。
「来たかってん、メイド喫茶。長年の夢叶ったわ〜」
「長年にしては小っちゃい夢やな・・・」
しばし雑談していると、メイドがドリンクを運んで来る。
「こちらコーラになります。こちらキャラメルラテアートです」
正志は、キャラメルラテアートを見て仰天した。立ち並ぶビル群が途轍もなく精密に描かれていた。
パースもバッチリ取れている。漫画家のアシスタントかと。彼は、メイドに振り返り聞いてみたくなる。
「これ、いくらなんでも気合い入りすぎ・・・って、うわあああっ!」
「どうかなさいましたか?」
「どっちツッコんだらええねん」
「どっち・・・とは?」
「このどえらい絵のことか、オノレの頭に乗っとるそれかや!」
「頭? 帽子のことでございますか?」
「そんな鳥の巣みたいな帽子があるかぁ! なんでビッシリ、リーゼント決めとんねん!」
メイドの髪型はこの雑談中程度の間に、昭和のヤンキーのようなリーゼント頭に変身していた。
「軽く特攻の拓に出てきそうなメイドがおるか! 世界観合わせろや! 怖いわ!」
「やっぱりチグハグですよね。直してきますね」
メイドは奥に引き返すと、着替えてまた出てきた。
「先程は失礼致しました。世界観を合わせました」
「それでええねん…ってコラ! メイドぉオオオオ!」
メイドは一層気合いの入った特攻服で出直してきた。
「ますます特攻の拓になってる! お前なんやその特攻服は。なんでそっちの世界観に合わせてきよんねん。ほんでなんや、お前が手に持っとるそれは」
「伝票を取るためのペンですが・・・」
「釘バットや・・・どこにカチコミに行くつも・・・」
「ちょおごめん、マサやん」
武士に声をかけられ、メイドに放つつもりだった怒声を四方山に向ける。
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