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「まあでも仕方ないわ。というか、本当のことを言ったら逆に私があなたに怒られちゃうかもね」
そう言いながらまさみさんはゆっくりと公園の中へと歩み出した。そして立ち止まったのは、私が最初に画像を送った桜の木の下だった。
「ここにね、あったの」
なんのことだか分からず私が無言でその背中を見つめていると、まさみさんは更に続けた。
「玉津のコーヒー牛乳の空き瓶が二本、ここにあったのよ」
何を言っているのかまだ理解できないでいると、更に更にまさみさんは続けた。
「私ね、玉津牛乳のお嬢さんと同級生なのよ。そのお嬢さんが言ってたの。最近は瓶牛乳がめっきり減っちゃって瓶を作っている業者も減っちゃっているのよ。だから瓶の単価もめちゃ上がってて、だから再利用できる空き瓶はとっても貴重なんだって」
まさみさんは振り向くと私の目を見た。同性ながらその視線にはいつもドキッとさせられる。
「だから空き瓶はちゃんと返却してねって」
で?だから?
その目に見据えられてその言葉が出せずにいると、まさみさんは私の肩に手を置いた。
「あなたも牛乳瓶はガラスゴミに出さないでちゃんと回収ボックスに投函してね」
私はやっと理解した。まさみさんがゴミを回収しないで待っているように言ったのは、それを捨てさせないためだったのだ。でもそれなら瓶だけは捨てないでと言ってくれたら済む話だったはずだ。そんな疑問を投げかけようとしたら、まさみさんは踵を返して自身の車へと歩き出した。
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