ポーションがあればなんでもできる! 美女エルフに才能を見いだされた俺、錬金術師になったらサクサク成り上がれました

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 酒場で、パーティーメンバーが揃っている時のことだった。 「魔法が使えなくなった魔術師に用はない! リヒトをパーティーから追放する!」 「「「異議なし!!」」」  パーティーリーダーに追放宣言をされてしまった。しかもパーティーメンバー全員がそう望んでいた。 「そ、そんな……」  つい先日、モンスターとの戦いで魔術回路を損傷してしまった。  神経がなければ体が動かないように、魔術回路がなければ魔法が使えない。魔術師にとって致命的な傷を負ってしまったのは、俺が一番わかっていた。  だからこそパーティーの役に立てるようにと働いてきた。荷物持ちに斥候、モンスターの弱点や攻撃モーションを把握して最適な行動を指示したり、素材の鑑定や売却交渉となんでもござれ。魔術師としては無理でも、なんでも屋としてパーティーの一員でいられると思っていたのに……。  俺一人がそう思っていたところで、みんなから必要とされていないのならどうしようもない。無理なものは無理。多数派の意見には逆らえない。 「……わかった。今までありがとう」  泣きそうになるのを堪えて、元パーティーに背を向けた。  もう魔術師ではないのは事実なのだ。求められた働きができない以上、他のことで頑張っていたからといって、パーティーに居座り続けることはできない。 「ふぅ。やっと追放できたぜ」 「魔法が使えないくせに分け前をもらおうだなんておこがましいと思っていたんだよ」 「いちいち指示してくんのも鬱陶しかったのよ。まともに戦えないくせに何様って感じ」 「リヒトがいなくなった分の報酬で酒飲もうぜ。お荷物くんがいなくなった祝い酒だ」 「「「異議なし!!」」」  だからって、聞こえるようにそんなこと言わなくてもいいじゃないか……っ。  背中に元パーティーメンバーの笑い声が突き刺さる。嘲笑われるのは吐き気を催すほど嫌な気分になった。  さて、これからどうしようか? 魔法を使えない魔術師を雇ってくれるパーティーが他にあるとも思えない。  だからって早くどこかのパーティーに所属しなければ宿代すら払えなくなる。追放されたショックはあるが、金の問題を考えないわけにはいかなかった。 「ねえ君、私に雇われてみない?」 「え?」  唐突に美しい女性に声をかけられた。  彼女の端正な顔がこっちを向いている。それだけのことで心臓が早鐘を打つ。綺麗な金髪が輝いているように見えるのは、彼女が美しすぎるのか……。とにかく見惚れずにはいられなかった。  見つめていると気づいた。彼女の耳が長いことに。  エルフ……。人間族とは違った、高位の存在だ。 「見てたわよ。パーティーのみんなに追い出されちゃったのよね? だったら、私が君を雇ってもなんの問題もないわよね。ねえ?」 「うっ……」  見られていたとは恥ずかしい。酒場の真ん中で大声で追放されたんだから目立つのもしょうがないけど……恥ずかしいものは恥ずかしい!  心の中で羞恥で悶え死にそうになっていると、美女エルフの顔が接近してきた。羞恥とは違った熱が顔に集まる。 「で、返事は?」 「は、はい! 喜んでお受けいたします!」  背筋をピンと伸ばして了承した。  追放されてしまったから、もうどこからも声がかからないと思っていた。美女エルフの依頼がどんなものかはわからないが、仕事をもらえること自体がありがたい。 「よかった。これからよろしくねリヒトくん」 「あ、はいっ。って俺名乗りましたっけ?」 「え? あ、あはは……や、やーね。さっき追放されていた時に名前が聞こえてきたのよ」 「ああ、そうだったんですね。改めましてリヒトです。これからよろしくお願いします。それで、お姉さんの名前は?」 「お、お姉さん……っ」  美女エルフは顔を真っ赤にして胸を押さえた。急に体調が悪くなったのだろうか? 「こほんっ。私の名前はエルフィーよ。べ、別にお姉さんと呼んでも構わないわ。エルフィーお姉ちゃんでも可!?」 「はい。よろしくお願いしますエルフィーさん!」  エルフィーさんはガクッと項垂れた。なぜに?   ※ ※ ※  エルフィーさんは錬金術師である。魔力の高いエルフなので、その腕に期待できるのかもしれない。 「私の専門は魔法薬の調合よ。町に流通しているポーションの半分は私が調合したものなんだから」 「は、半分も!?」  想像以上にすごい人だった。町の半分ってことは、俺もエルフィーさんのポーションにお世話になっていたかもしれない。  一つ問題点があったとすれば、エルフィーさんは冒険者ギルドではなく、生産ギルドに所属していたことか。錬金術師だから当たり前だけども。  彼女に雇われるために、俺も生産ギルドに登録することになった。手伝いだとしてもギルドに所属しなければならない。少し手間だが、身元の知れない奴が手を加えたポーションを口にさせるわけにもいかない。エルフィーさんの信用問題に関わる。 「あの……。俺、生産って何もやったことがないんですけど……大丈夫でしょうか?」  今まで冒険者としてしか働いてこなかった。魔術師ではなくなった以上、冒険者にこだわるつもりはないが、だからって生産職としてやっていける自信があるわけでもなかった。 「安心しなさいリヒトくん。私は必要があるから君に声をかけたのよ。絶対にリヒトくんの力がいるんだから」  俺の力が必要とされている。まだ役に立つかはわからないが、頼ってもらえたのなら、エルフィーさんの力になりたいと心から思った。 「リヒトくん。まずは背中を向けてごらんなさい」 「は、はあ。こうですか?」  言われた通り、エルフィーさんに背中を向ける。彼女は俺の背中に手を置いた。急に触れられてビクッと体が跳ねた。 「あら、驚かせちゃった?」 「いえ、まあ……少しだけ」 「うふふ。耳まで真っ赤にさせて、リヒトくんは可愛いわね」  エルフィーさんがおかしそうにくすくすと笑う。背中に置かれた彼女のひんやりとした手が、笑い声に合わせてほんのちょっぴり擦れる。  なんだか顔が熱くなってきた。変な汗が出てるし。俺、からかわれてんのかな? 「じっとしていてね。これからリヒトくんの魔術回路を見させてもらうから」  からかわれているなんてとんでもない。俺の損傷した魔術回路を確認するようだった。  エルフィーさんの手のひらが温かくなっていく。彼女の魔力が熱として俺の体に行き渡る。  しばらくじっとしていると、エルフィーさんは「ふむふむ」と何か納得しているような声を漏らした。 「わかったわ。楽にしていいわよ」  背中からエルフィーさんのぬくもりが遠ざかる。なんだか名残惜しい気がしてしまう。 「あの、どうでしたか?」 「魔力回路の一部がなかなかお目にかかれないくらいにはズタボロになっていたわね。どんな無茶をすればこんなことになるのかしら?」  もしかしたら魔術回路が治るかもしれない。そんな儚い希望は、エルフィーさんの言葉を聞く限り、考えるだけ無駄なようだった。 「リヒトくんは少し前までは魔術師として冒険者をやっていたのよね。何があってこうなったのか、聞かせてもらえる?」 「それは……」  別に隠すことでもない。今更実力不足が露呈したところで、今以上の恥はないだろう。  俺はエルフィーさんにどうして魔術回路が役に立たなくなるほど損傷してしまったのか、その経緯を話した。 「何それブラックじゃない! リヒトくんの元パーティーは人をなんだと思っているのよ!」  それが、俺が話し終えた後のエルフィーさんの反応である。 「たった一人の魔術師に攻撃、防御、回復、生活魔法を頼り切りだなんて……。魔法はそう簡単に頼れる便利アイテムじゃないのよっ。なんでもかんでも魔法を使っていたら、魔術師なんてすぐ倒れちゃうわよ!」  エルフィーさんは頭を抱える。魔力量の多いとされるエルフでも、俺が魔法を使用する頻度はおかしいと感じるらしい。 「それに何? 回復魔法かけながら攻撃魔法を放って、付与魔法と探査魔法を同時詠唱!? ちょっと言っている意味がわからないのだけど……」 「パーティー全員の要望を聞いていただけですよ」 「普通効果の違う魔法を同時に使用することはできないんだからね!?」  そうなのか? みんな普通に「魔術師ならそれくらいできるだろ?」って感じで言ってくるもんだからそういうものかと思っていたよ。 「そうした無理がたたった上に、最後にはドラゴンのブレスを魔力回路と引き換えに、たった一人で防いだと」 「あの時に魔術回路が壊れてしまったような、そんな感覚がありました」  最強種のドラゴンと遭遇し、パーティーの全員が逃げ出した時に俺はしんがりを務めたのだ。  パーティーのみんなに向かって、すべてを焼き尽くす炎のブレスが迫ってきた。俺はそれを防ごうと、ありったけの魔力を注いで防御魔法を展開した。  そのブレスを防いだ代わりに、俺の魔力回路がズタボロになったのだ。みんなの命を救えたのだから、このことについて後悔はない。  それからは魔術師として働けなくなった代わりに他のことで貢献しようとした。でも、パーティーメンバーは誰一人として、俺がやってきたことを望んじゃいなかったんだ。 「いやいやいや! 最強種のドラゴンのブレスを一人で防ぐだなんて……、リヒトくんの魔力はどうなっているのよっ。魔力がとても豊富な子だとは感じていたけれど、想像以上どころじゃなかったわ……。しかもその後の仕事量が半端じゃないわよ! 場合によっては魔術師以上の仕事をやってのけてるし……。ここまでやってくれているリヒトくんが、なんで誰からも感謝されてないのよっ!」  エルフィーさんは最後まで言い切ると「うがぁーっ!」と、エルフらしからない声を上げながら手近な壁を殴りつけた。壁にヒビが入るほど怒っていらっしゃる様子。すぐに壁を直して曖昧に相槌を打った。 「……リヒトくん」 「な、なんでしょうか?」  エルフィーさんの怒りがこっちに向いたらどうしよう。  冷や冷やしながらエルフィーさんをうかがっていると、彼女の視線が俺ではなく、ついさっき殴りつけた壁に向いているのだと気づく。 「今、君はどうやって壁を直したの?」  さっきまで怒っていたとは思えないほど、今はとても冷静な口調だった。それが逆に怖いのはなぜだろうか?  あまりエルフィーさんを刺激しないように、いつも通りに答えた。 「壊れる前の壁を再現しただけですが」 「再現って何!? 魔法を使ったみたいに一瞬で直ったのよ! 一体どういうことなのよ!?」  エルフィーさんが吼えた。最初は大人びた美人さんだと身構えていたけれど、今は子供みたいに思える。  エルフはもっとクールな性格のイメージがあったが、実はそうでもなかったらしい。エルフィーさんの性格だからって気がしなくもないが。  こっちの方が面白くて取っつきやすいな。この瞬間、俺の緊張は解れた。   ※ ※ ※ 「リヒトくん。あなたは錬金術師になりなさい」  しばらくして落ち着いたエルフィーさんは、俺に向かってそんなことを言った。 「はあ」  気のない返事が口から零れた。錬金術師と言われても、イマイチ想像できない。 「でも俺、魔術回路が使いものにならないんですけど?」  エルフィーさんの手伝いはできても、俺が錬金術師になるのは現実的じゃない。というか無理。魔力がなければポーションの一つも作れやしないのだ。  錬金術師にとって魔力は必要不可欠なもの。それはエルフィーさんが一番わかっているだろうに。  俺の疑問を否定するように、エルフィーさんは首を横に振った。 「それは問題ないわ。リヒトくんの魔術回路がズタボロになったとは言ったけれど、それはほんの一部よ。むしろ残っている方が多いくらい」 「は?」  どういうことだ? 魔力回路が残っているどころか、魔法の一つも使えてはいないんですけど? 「リヒトくんが無意識にやってたこと! それが全部魔法なのよ!」  エルフィーさんの大声にひっくり返ってしまった。 「え? え? ど、どういうことですか?」 「つまり、前のパーティーで雑用だとやってきたモンスターの弱点や行動を見極めたり、素材の鑑定も、重い荷物を運んでいたのもそう。それに、さっき壁を直したのも、全部魔法を使っていたの」 「いや、でも詠唱もしてないですし」 「無詠唱どころの話じゃないわ。頭の中でイメージしたことを再現する。神の領域に手を伸ばした魔術師、彼……いいえ、伝説上の魔術師と同じことを、リヒトくんはやっていたのよ!」  興奮しているのか、言葉ごとにエルフィーさんは俺に顔を近づけてくる。良い匂いがした……。 「ただの冒険者にするには惜しい。いいえ、人類の損失と言っても過言ではないわ」 「大げさすぎませんか?」 「大げさに言っても伝えきれないわ。あなたなら世界を変えられる。救える命がある。リヒトくんが錬金術師になってくれるのなら、私はなんでもする覚悟がある。こう言っても伝わらないかしら?」 「今、なんでもするって言いましたか?」 「え?」  きょとんとするエルフィーさん。そんな無防備な彼女に、俺の方からずいっと顔を近づけた。  千載一遇のチャンスである。初めて芽生えた欲求に従い、俺の口は動いた。 「立派な錬金術師になったら、俺の言うことを一つだけ聞いてください。なんでも、聞いてくれるんですよね?」  俺の真剣な声のトーンに、エルフィーさんはわたわたと慌てる。 「きゅ、急にどうしたの? リヒトくん、怖い顔しているわよ……?」 「いいから。返事は?」  真剣に彼女を見つめる。目を逸らそうとするエルフィーさんを強引にこちらへと向かせて、根気強く返事を待った。 「……はい」  ようやく聞けた彼女の了承に、小さくガッツポーズした。  こうして、俺は錬金術師になるための修行を始めたのだった。   ※ ※ ※  目標を意識すると、上達は早いものだった。  俺は意識していなかった膨大な魔術回路を意のままに扱えるようになった。もともと無意識レベルで使いこなしていたのだ。コツさえ掴めば、錬金術に応用するのは簡単だった。  エルフィーさんから様々なポーションの作り方を教わった。普通の回復系ポーションから、スタミナポーションやマナポーション。さらには、どんな病気も治すものまで作れるようになった。 「まさかここまでとは……。もう私がリヒトくんに教えられることは何もないわ……」  エルフィーさんは俺が作ったポーションの山を眺めながら呟いた。なぜか彼女が真っ白になっているように見えるのだが、気のせいかな?  実際に売り物にしてみても、問題がないどころか大好評だった。 「ポーションのおかげで大怪我が治りました!」 「魔力切れを起こさずダンジョン攻略できました!」 「医者から不治の病だと宣告された病気が治りました!」 「ポーションのおかげで彼女ができました!」 「ポーションのおかげで夜の生活が充実するようになりました!」 「ポーションのおかげで魔法学院でモテモテになれました! 本当にありがとうございます!!」  などなど、たくさんの意見が耳に入ってきた。……途中からポーション関係なくね? とか思ったが、これも副次効果ってやつだろう。  あまりにも売れすぎて、独立して店を出せてしまった。今ではこの町で出回っているポーションの九割ほどが、俺が作ったものである。 「エルフィーさん、俺を一人前の錬金術師だと認めてくれますか?」 「認めるも何も……もう私はリヒトくんの足元にも及ばないわよ……」  やさぐれた態度を見せるエルフィーさんだった。やさぐれエルフってのもいいね。  そんな彼女の手を取る。 「リ、リヒトくん?」 「一人前になったので、俺のお願いを聞いてください」  しっかりと目を合わせる。見つめていると、エルフィーさんの頬がぽっと赤くなった。 「お願いって……な、何かしら?」  一呼吸置いてから、俺は言った。 「俺と、結婚してください!」  一呼吸置いてから、エルフィーさんは口を開いた。 「ええええええぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」  大きな目をさらに大きくさせて、エルフィーさんはわかりやすいほどに驚きを見せた。 「あ、あのあのあのっ、な、なんで……」 「一目見た時からビビッときました。初めて人を好きになったんです。エルフィーさん、俺と幸せな家庭を築きましょう!」 「で、でも……私はエルフよ? リヒトくんよりもずっと年上なんだから……」 「関係ありません。年上最高です。いいえ、エルフィーさんが最高なんです! 俺の女になってください!」 「はわわわわわわわわ……!?」  エルフィーさんの頭から湯気が立ち上る。目をぐるぐるにさせて余裕が感じられない。  絶対に逃してなるものかと、握る手を強めてたたみかけた。 「俺は前のパーティーから追放されて、自分の居場所がどこにもないのかもしれないって不安でした。その時に、エルフィーさんに声をかけられて、必要だと言ってもらえて……俺がどんなに嬉しかったことか……」 「リヒトくん……」 「好きですエルフィーさん。あなたは俺を伝説上の魔術師だと言ってくれましたが、あなたにとって俺はそれだけの大きな存在になれましたか?」  ポーション作りを丁寧に教えてくれた。師弟として、一緒に生活してきた。  エルフィーさんの様々な姿を見てきた。そして、生涯をかけて、彼女を幸せにしたいと心から思った。  俺にとって、エルフィーさんは心の大半を占めるほど大きな存在だ。  俺の気持ちよ、彼女に届いてくれ! と願った。 「……はい。私にとってもリヒトくんは大切な存在よ。だから、その……好きよ」  エルフィーさんの言葉を聞いた瞬間、胸が幸福感で満たされた。 「……んっ」  自然に俺たちの距離が縮まる。唇に触れた感触は、幸せの味がした。   ※ ※ ※  後日談。とある昼下がりのこと。 「リヒト! 雑用のお前がパーティーから抜けたせいで依頼をこなせなくなっちまったじゃねえか! 責任取ってこの店のポーション全部よこしやがれ!!」  俺を追放したパーティーリーダーが店に訪れたらしい。  らしい、というのはその時に俺は不在だったのだ。 「客かと思ったら違うようね。残念なのだけど、夫は不在なのよ」 「エルフ!? し、しかもお、夫って言ったか?」 「リヒトくんのことを言っているのなら、私の夫で間違いないわ」 「バカな……っ。あのリヒトが高貴な存在であるエルフと結婚できるはずがない……!」 「バカなのはあなたの方よ。今、リヒトくんがこの町にとってどういう存在なのか知らないの?」 「あいつは無能な魔術師だろ! 今まで迷惑かけられた分、タダでポーションをもらって何が悪い!」 「ふぅ。リヒトくんのポーションがどれほど希少価値があるものなのかわかっていないようね。そういうの、営業妨害よ」 「リヒトのやつ、稼ぎもいいようだな。だったらその金も献上してもらおうか。貸しにしてやっていた迷惑料ってやつだ!」  高らかに笑う元リーダーは、いつの間にか屈強な男に囲まれていたのだとか。 「え? な、なんだお前らは!?」 「この町でリヒトさんに世話になった奴は大勢いるんだ」 「俺たちの英雄に迷惑かけようってんなら……」 「あんたには二度とリヒトさんに会おうって気を起こさねえようにしてやるよ」 「ちょっ、待っ……ど、どこへ連れて行く気だ!? や、やめろ……やめてくれぇぇぇええええぇぇぇぇぇぇーーっ!!」  どこかで絶叫が木霊したのだとか……。 「ただいまー。エルフィー、留守番中に何もなかったか?」 「お帰りなさいあなた。はい、何もなかったわよ」  エルフィーがニッコリと笑顔を見せてくれる。それだけで疲れが吹っ飛んだ。  嫁エルフから幸せをもらい、ポーション作りに精を出す。仕事も家庭も充実していた。  俺は最高の錬金術師ライフを送り続けるのであった。
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