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彼女が現れたのは、僕が指定された場所に到着してから十五分後、「今朝の出来事は幻じゃなかったよな」と不安になり始めた頃だった。
「ごめん、お待たせ」
少し息の乱れた声がして振り返り、目に入った彼女の姿に僕は混乱した。
「なに、それ」
彼女の左手に、買い物袋がぶら下げられていた。あれはたしか、裏門を出てすぐのところにあるスーパーの袋だ。
半透明のビニール袋に入っていたのは、料理に使いそうなサラダ油と、いくつかの調味料と、それから。
「卵?」
思わず漏れ出た疑問は無視された。彼女はいつも通りの大人びた微笑を浮かべ、空いている方の手で僕の手首を掴む。
「じゃ、行こっか」
「行くって、どこに」
「見たらわかるでしょ。調理室だよ」
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