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僕が生まれた日、両親は初めての子供に期待と喜びで溢れていた。
ちょうど桜の咲く頃が、僕の出産予定日だったらしい。
だけど、僕が生まれる前も、生まれる瞬間も、生まれた後も、桜なんて咲いていなかったと言う。
それなのに、十月十日お腹へ呼びかけ続けていた名前がさくらだったことで、愛着が湧いて他の名前なんて考えられないと、そのまま僕は朔良という名前をつけられた。
学校で名前の由来を調べる宿題が出されて知った事実だった。
それまで僕はずっと、満開の桜の咲き誇る日に生まれたからこの名前なんだとばかり思っていたから。当然その事実を知った瞬間にがっかりした。
小学校時代の友人にはいまだにこの事でいじられる。先生が名前の由来を書いた僕の作文を授業参観でみんなの前で読ませたからだ。
それから、僕はこの朔良という名前が少しだけ嫌いになった。
そのせいなのかは分からないけれど、僕の人生において、桜という存在は何故か僕のことをことごとく嫌っているように感じた。
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