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彼女との出会いは、桜散る公園でフラれた僕が落ち込んでいるところに現れた、一匹の猫がきっかけだった。
僕の一方的な憧れで好意を寄せていた先輩に、桜の木の下で告白をした。結果は散々。そりゃそうだ、向こうは僕の何も知らないのだから。フラれた僕は、満開に咲き誇る自信満々な花蕾の集まりを見て、またしても桜を嫌いになる。
やけに人懐こい猫は、僕が落ち込んでいるのが分かっている様にベンチで落ち込む僕の足元へ擦り寄って来た。よく見るとピンク色の首輪をしていて、飼い猫だとわかった。
あたりを見渡しても、砂場や遊具で遊ぶ子供と親以外にこの猫の飼い主らしき人は見当たらない。
「でんぶー」
凛っと鈴を鳴らしたような声がして、猫はすぐに僕の足から離れて声の主を探して駆け出した。
「いたいた。ダメよ、いなくなったりしちゃ」
しゃがんで猫を撫でる彼女は、淡いピンク色のワンピースを着た可愛らしい女性だった。
猫が僕をじっと見つめる。
その視線に、彼女もこちらを見て、目が合った。途端に、猫はまた僕の足元に絡みついて来た。
「あ! でんぶ! ごめんなさい」
駆け寄って来た彼女は困ったように笑った。
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