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「元気だった?」
「早瀬、なんでここに……?」
「大宮くんに会いたくて」
いや、わからない。
そんな理由で、不確かなこの場所を訪れるはずがない。
「ふふふ、相変わらずきょとんとする顔が笑える」
「そっちこそ、相変わらずの口ぶりだね」
なぜか自然と口元がほころんだ。
目の前にいるのは、確かに早瀬美鈴だ。小学6年で転校していった彼女だ。かなり綺麗になっているが。
「久しぶりにこの近くを通ったものだから、ここに来れば大宮くんに会えるかなって思ったの。まさか本当に会えるとは思わなかった」
信じられない。
僕も会いたいと思っていたけれど、まさかこんなにも偶然に再会できるだなんて。
「15年ぶりだね」
「そうだね。ちょうど今、早瀬のこと思い出してたところだったんだ」
「嬉しい。私も大宮くんのこと思い出してたところだったの」
その言葉に身体中が火照る。
当時に比べ、かなり大人っぽい雰囲気の彼女に若干背中がむず痒くなった。
「そ、そう。それは僕も嬉しいよ。そうそう、この前映画観に行ったよ。夢だった女優になれたんだね。おめでとう」
「観てくれたんだ、ありがとう。まだまだ駆け出しだけどね」
「それでもすごかったよ。堂々とした演技で。ベテランに負けてなかった。やっぱり早瀬は、優等生だ」
「なにそれ」
クスクスと笑う早瀬美鈴に、当時の姿が重なる。
僕はここぞとばかりに聞いてみた。
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