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「ねえ、早瀬にずっと聞きたかったことがあるんだ」
「なに?」
「ここで別れの挨拶をした時、なんでファーストキスの話なんてしたの?」
「……知りたい?」
「うん」
「どうしても?」
「う、うん……」
「笑ったら怒るよ?」
「笑わないよ」
「……そう。なら言うね」
早瀬美鈴が大きく深呼吸をした後、僕の目を見てゆっくりと口を開いた。
「私ね、あの時大宮くんのことが……」
春の風が吹く。
彼女の言葉は心地よく僕の耳に届いた。
大人になった早瀬美鈴が傍らに立つ満開の桜は、この15年間で一番綺麗だと思った。
この日、僕は桜が好きになった。
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