桜の思い出リフレイン

11/11
前へ
/11ページ
次へ
「ねえ、早瀬にずっと聞きたかったことがあるんだ」 「なに?」 「ここで別れの挨拶をした時、なんでファーストキスの話なんてしたの?」 「……知りたい?」 「うん」 「どうしても?」 「う、うん……」 「笑ったら怒るよ?」 「笑わないよ」 「……そう。なら言うね」 早瀬美鈴が大きく深呼吸をした後、僕の目を見てゆっくりと口を開いた。 「私ね、あの時大宮くんのことが……」  春の風が吹く。  彼女の言葉は心地よく僕の耳に届いた。  大人になった早瀬美鈴が(かたわ)らに立つ満開の桜は、この15年間で一番綺麗だと思った。  この日、僕は桜が好きになった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加