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「道連れって……。なにそれ?」
「そのまんまよ。学級活動の道連れ」
「……早瀬さんは好きでやってるんじゃないの?」
僕の疑問に彼女は「まっさかー!」と笑いながら否定した。
「誰が好き好んでやるっていうのよ、そんなこと。私、別に校内の美化なんて興味ないし、どうだっていいって思ってるわ」
衝撃的な発言に、僕は自分の耳を疑った。
「は、早瀬さんって、そういうこと言う人なんだ……」
「ふふふ、意外だった?」
「うん、意外」
「私、前世は猫だったからね」
「猫?」
「普段、猫かぶってるから」
にゃん、と猫のポーズをとる。
そんな笑えない冗談を言うのも、相手が僕だからだろうか。
誰ともつるんだことがないし、おしゃべりなわけでもない。
引っ込み思案で、教室の隅でおとなしくしている存在だからこそ、安心して打ち明けてるのかもしれない。
そう思うと、少し嬉しかった。
「このことは内緒ね。内申書に響くから」
内申書という言葉に、僕は思わず「ぷっ」と笑ってしまった。
「な、なによー」
「早瀬さんって、もしかして内申書のために学級委員長やってたの?」
「それ以外ある? じゃなきゃこんなめんどくさい係やらないわよ」
僕はその時、彼女に対して嫌悪感よりも親近感がわいた。
優等生で先生の言うことばかり聞く良い子ちゃんと思ってたけど、そうではない。
僕らと同じ、こちら側の人間なのだ。ただし、計算高くて利己的な。
前世が猫(自称)というのも頷けた。
「じゃあ、僕も内申書のために一生懸命手伝わないとね」
「お、わかってるね。やっぱり大宮くんを選んだ私の目に狂いはなかったよ」
僕らはお互いにクスクスと笑いながら学級活動もどきをやり始めたのだった。
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