桜の思い出リフレイン

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 僕は桜が嫌いだ。  柏木公園の桜が満開になると、いつも思い出すから。  15年前、小学6年生の時に転校していった早瀬美鈴のことを。  ロングヘアーの髪を揺らしながら、散りゆく桜をバックに走り去って行った彼女のことを。  あの日、ファーストキスについて語った彼女の真意はなんだったのか。  あの思わせぶりな態度はなんだったのか。  15年経った今でもわからない。  彼女はその後、遠くの地で中高一貫の学校に進学し、卒業後舞台エキストラを経て女優になったと聞いた。  肩書も何もない、演技派若手女優としてちょくちょくテレビや映画に出ている。  先日も公開したばかりの映画の番宣に彼女がゲスト出演していた。  見た目はだいぶ大人へと成長しているものの、優等生っぽいしゃべり方が当時とあまり変わっておらず、とても嬉しかった。  僕はといえば、小5の時に言った通り身の丈にあった中学に行き、身の丈にあった高校へ行き、大学卒業後、地元の小さな会社に勤めている。  不満がないといえばウソになるけど、それなりに充実はしている。  ただ、やはり将来の夢だった宇宙飛行士にはなれなかった。  これが小学校の頃から目指していた者とそうでない者との差だろう。  そもそも、中学の終わりくらいに漠然と「なれたらいいな」程度の夢だったのだから、なれなくて当然だ。  そう思うと、彼女は本当にすごい。  あんなに幼いころから女優を目指し、途中で予定路線が変更されたにも関わらず、めげずに頑張って女優になれたのだから。尊敬に値する。
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