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「……っていう夢を見たんだ……」
テーブルにおでこ擦り付けたまま呻いた俺の後頭部に降り注いだのは、
「ぶッひゃひゃひゃひゃひゃ!」
航生の下品な笑い声と、
「酒が不味くなった……!」
三枝の酒くさい嘆きだった。
「おっまえ、欲求不満すぎな」
タブレットで注文を追加しながら、航生がイヒヒヒと下品に笑う。
「しょうがないだろ! 佐藤くんが……」
ーー世間は今日から春休みですね。
とか言うから……!
そういや、学校が春休みの時って何してたっけーーなんてノスタルジーに耽ってしまったばかりに、あんな夢を……いや。
百歩……いや、千歩……いやいや、一万歩譲って、それはいいとしても、
「お前らに言うんじゃなかった……!」
件の夢のおかげで寝不足でのまま出勤したら、やたら「顔色が悪い」とか「なんか悩んでんだろ」とか「聞いてやるから付き合え」とか心配してる風を装ってくるからうっかり感動して、でもいざ連れてこられてみたらしっかり居酒屋だし、自分たちはさっさと酒飲んで酔っ払うし……こっちは、素面100%で恥ずかしい告白させられてるってのに!
「佐藤くんには言わねえの?」
ウケケケ、と笑いながら、航生がジョッキを傾ける。
俺は、ごくごく上下する喉仏に怒鳴った。
「い、言えるわけないだろッ!」
だいたい、制服姿の俺とか、佐藤くんの後輩になった俺とか、そういう変態的妄想に耽るのは、佐藤くんの専売特許なんだよ。
それなのに俺まで参戦したら、もう収拾つかなくなるじゃないか!
「でも、教えてやったら大喜びの大興奮で、あーんなことやこーんなことしてくれんじゃねえ?」
「だ、だから、俺は別に欲求不満なんかじゃないって!」
「ふーん?」
航生はニヤニヤ笑ってから、スマートフォンを取り出した。
ビール片手に器用に親指を動かしながら、なんだかものすごくニヤニヤしているし、三枝は三枝で、淡々と枝豆を食べ続けている。
俺は、仕方なくグラスを手に取った。
喉に流し込んだカルピスは溶けた氷で薄まっていて、火照った思考をちっとも癒してくれない。
俺は、深いため息を吐いた。
「だから、酔っ払いは嫌いなんだよ……」
俺は、欲求不満なんかじゃないって言ってるのに。
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