しゅーくりーむは美味かった

しかし、この女性はなぜこんなにも詳しいのだろうか？
僕は疑問を持ち、女性に質問した。

「私も、重度のアレルギーを持っているからです。乳製品が、食べられなくて。」
「ほぉ…」
「ここはしっかりとアレルギー対応をしてくれるところではありますし、間違って混入する確率は極めて低いかと。」

ふむ、なぜそんなに言い切れるのであろうか。
すると、僕の考えを読み取ったかのように女性は言った。

「ここはビュッフェ形式のレストラン――素晴らしいことに、全ての料理のアレルギー表を用意してくださっています。また、新品のトングもくれました。わざわざ新しいトングを使う理由は、単純です。
例えば、あの場だとオムレツの近くにチーズパスタがありました。チーズパスタはもちろん乳製品が入っていますね――？　この2つをよそうためのトングは別れていますが、極稀にオムレツのトングを使ってチーズパスタをよそう人がいます。すると、オムレツ用のトングにチーズがついてしまう。なので、そのトングを使ってよそったオムレツを食べると、乳製品アレルギーの私は、アレルギー反応が出てしまうというわけです。実際に一度経験したことがあります。その時は大事には至らなかったものの、ちょっとした騒ぎにはなりました。」

なるほど、あのとき、なぜこの女性のみが新品のトングを使っていたか気になって気になってしょうがなかったのだが――これらの背景を踏まえると納得だ。

「とにかく、私のような人に対して新品のトングを用意してくれるあたり、対応がしっかりしていると言いたいわけです。」
「ふむ。一理ありますね。」

と、するとやはり毒の可能性が高い、のだろうか。

「ただ、一つ言うならば、今回の方の症状はアナフィラキシーショック――アレルギー反応のことです――と酷似しています。まぁ、似たような症状を持つ毒もこの世に一つはあるでしょうけど。そこは専門外なので私にはわかりません。」