しゅーくりーむは美味かった

6/9
前へ
/9ページ
次へ
一人の警官が、メガホンを持ちレストランに入ってきた。 「死因は毒ではなく、アレルギーによるものだった。皆、安心して帰ってよい」 原因―――それはアレルギー。被害者、川崎拓人は重度の卵アレルギーだったようで、シュークリームに含まれていた卵白と卵黄に反応してアナフィラキシーショックを起こし、死んだ。 ほっ、と安堵のため息が周りに広がっていく。 危うく殺人の嫌疑をかけられる可能性があったんだ。皆がほっとしたことに疑問はない。 ただ、僕には緊張が走った。 あれほどまでに女性が主張していた、このレストランのアレルギー対応力。なぜ、手違いが起こってしまったのか。 「毒入りでもなんでもなかった。事故だ。もう帰っていただいて構わない。」 警察はそういうけれど。 「本当に事故なのだろうか」 僕はそう呟いた。 その声を聞きつけた警官が、一瞬眉をピクリと上げた。 「と、いうと?」 警官が僕の言葉に反応したことにより、僕の周りにいた人たちが、僕のことを睨んでくる。 既にこのバイキングエリアに、5時間も拘束されているんだ。一刻も早く帰りたいと思う人が山ほどいる。 でも、まだ帰すわけには行かない。だって、犯人がいるかもしれないんだから。 「先程、アレルギー持ちにとっては一度も食べたことのない料理を、いきなりガツガツ食べ始めるのは自殺行為だ、とおっしゃいましたね?」 「はい。」 女性が答えた。 それでは、これではどうだろうか? 「もとから知っている料理人――信頼している料理人――から、この料理にそのアレルギー物質は入っていないと言われたら…?」 「…それは。…信用してしまいますね」 だとすると、被害者はここの料理人をもとから知っていたのではないだろうか。 ただ、疑問が残る。ここの料理人は誰一人として、被害者が卵アレルギーを持つことを知らなかったのだ。 なぜだろうか? 普通、アレルギーの問い合わせをすると料理長に電話が行くと聞いた。厨房の様子を1番よくわかっているからだ。 と、いうことは。 下っ端の料理人が、客がアレルギー持ちであることを隠すことは不可能なのである。 脳内に、恐ろしい推理が浮かび上がってしまった。 「料理長が、被害者と元から知り合いだった…そしてそのことをどの料理人にも伝えず、被害者には卵が入っていないと嘘を付き、わざと食べさせた―――」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加