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倫三郎おじさんの葬儀はしめやかに行われた。
年齢が年齢だけに、友人のような人達の参列こそなかったけれども、親戚はかなりの数に上る。
僕がよく知らない親戚まで集まって、それはそれは大人数になった。
――そして、骨肉の遺産争いが始まった。
大伯父を筆頭に、血縁の近い人達が、倫三郎おじさんの莫大な財産を、少しでも多く相続しようと揉めに揉め始めたのだ。
もしおじさんに直系の子孫がいれば、ここまで揉めることはなかったのに。
僕は桜さん――曾祖母に「あなたがもっと待ってあげてれば」と思いを馳せつつ、同時に「あ、それじゃ僕が生まれないじゃん」等と複雑な気分を抱えた結果、ほんの少しだけ「桜」が嫌いになった。
(了)
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