変な張り紙

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 今日は少し早めに退社できた。とは言っても、既に22時を回っているが。  マンションの前まで来ると、入り口の前に中年の男が立っていた。  少し警戒しながら近寄ってみると、その男は髪も髭も伸び放題で、何日も風呂に入っていないかのような酷い臭いがする。  そして、その手にはボロボロの紙切れが握られていた。  この男がイタズラの犯人だろうか。明らかに正常な人間ではなさそうだ。 警察に連絡するために距離を取ろうとした時だった。 「おにいちゃん!おにいちゃん!」  紙を持った男が急にこちらを向き、狂ったように大声で叫びながら歩いてきた。その表情から、完全に正気を失っていることが分かる。 「おにいちゃん!おにいちゃん!」  俺は走って逃げた。  背後から聞こえる耳障りな声が徐々に遠のいていく。 「明日だよ!明日来るよ!」  声が完全に聞こえなくなるまで走り続けてから警察に通報した。  マンションに戻るとあの男の姿はなく、駆け付けた警察に事情を説明し、帰宅する頃には日付が変わっていた。  ――いったいどれだけ寝ていたのか、窓から見える街は夕焼けに照らされている。よほど疲れが溜まっていたんだろう、今日が休日で良かった。  安堵したのも束の間、激しい空腹に襲われた。それもそうか、今日はまだ何も口にしていない。冷蔵庫に助けを求めるも、無情にもその中には調味料と飲料しか入っていなかった。  冷蔵庫の前で肩を落としていると、スマホが鳴った。仲の良い同僚から飲みの誘いだ。丁度いい、買い物は明日にしよう。  楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、アルコールの過剰摂取で揺れる体をなんとか操って人通りの無い住宅街を歩いていると、背後から声を掛けられた。
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