変な張り紙

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 終電に乗り仕事から帰ってくると、マンションの入り口に一枚の紙が貼りつけられていた。               6が つ  9に ち               よる1 1し ”くらい           このあう ちにすんで いるあにいち           やん がああきなたまごをも ったあ           かあさんにつかまつ てしまいました  そう書かれた紙は、ゴミ箱から拾ってきたのかと思うほどクシャクシャで、文字もかなり汚い。くだらない子供のイタズラだろう。俺はその紙を無視した。  帰宅してシャワーを浴びていると、先ほど見た汚い張り紙が妙に気になった。思い返してみれば、いくつもおかしな点があるように思う。  まずは紙が貼ってある高さだ。自慢ではないが、俺の身長は180センチ以上だ。そして、あの紙は俺の目線より少し高い位置に貼られていた。そんな場所に子供が紙を貼れるだろうか。もしも貼ったのが子供でないなら、マンションの管理会社などに連絡する必要があるかも知れない。  次に日付だが、今日は6月6日、いや、もう7日になっているか。紙に書かれていたのは、たしか6月9日だったか・・・。  はっ、と我に返り、真面目に考えようとしているのが途端に馬鹿らしくなった。今日も始発で出勤だ。無駄なことを考えてる時間など無い。  早朝、紙はまだ貼られたままだった。まぁ、その内マンションの清掃業者が来て掃除してくれるだろう。  今日も終電で帰ってくると、紙が昨日よりもボロボロになっていた。所々破けたり何かのシミがついている。  まさかとは思うが、清掃業者に捨てられたものをわざわざ回収して貼り直したのだろうか。  世の中にはワケの分からない事をする人間が居るもんだと呆れながら帰宅した。
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