休暇

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休暇

 翌朝になって、目が覚めると頭痛がして‥‥‥隣に寝ている殿下を見て、更に頭痛がした。そうだ‥‥‥誰か来る前に、部屋へ戻って貰わないと‥‥‥。 「殿下、朝ですよ。殿下‥‥‥」  肩を揺すると殿下は目を覚ました。 「うーん‥‥‥今日は休みだよ‥‥‥」 「ですが、ここはわたしの部屋なので‥‥‥もうすぐ誰か来てしまいますよ」 「うーん‥‥‥たぶん、もう来たよ」 「え?」  ノック音が聞こえ、食事が載ったワゴンを押したメイドが2人中へ入ってきた。私が何も言えずに固まっていると、2人は手早くテーブルに朝食をセットし、去って行った。  しばらくして、私が我に返ると、殿下は眠いと言って、再びベッドへ潜ろうとしていた。 「殿下、起きてください。朝食が冷めてしまいます。今日一日、私と過ごすのではありませんでしたか?」  私がそう言うと、殿下はパッと飛び起きてテーブルについた。 「早く朝食を食べよう」  私は苦笑しながら席につくと、一緒に朝ごはんを食べたのだった。 *****  お忍びで街へ買い物へ出掛けると、殿下の護衛チームが私服でついてきているのに気がついた。気になりつつも、殿下が腕を引っ張るのでそちらへついていくしかない。若者向けのスイーツショップへ着くと列に並んだ。 「殿下は甘いものがお好きなんですね」 「いや、私は‥‥‥好きじゃない。ジョーが好きだって聞いてね」 「えっ‥‥‥」 「もしかして違ったか?」 「いえ、甘いものは大好きです。ここのクリープアイス、一度食べてみたいと思ってたんですよ」  殿下が私を気遣ってくれた事が嬉しくて笑顔で答えると、殿下に視線を逸らされた。 「‥‥‥‥‥‥ギル?」 「反則だろう。その笑顔は」  覗いたその先にある殿下の顔は、林檎のように真っ赤だった。 *****  クリープアイスを買って、近くにある公園のベンチに座ると殿下と2人で、黙々とクリープを食べた。 「ジョー、美味しい?」  私は口をモグモグさせながら無言で頷くと、殿下は私を見て微笑んでいた。 「アイス、ついてるよ」  殿下が指差した先を舌で舐めてみるが取れていないらしく、殿下は苦笑しながら私の唇の端を舐めていた。私は自分の頬が熱くなるのを避けられなかった。 「意趣返し」 「何の?」 「さぁ?」  私が赤くなって固まっていると、再びキスをしてきた。手にはクリープアイスがある為、キスをされている間、落とさないようにするだけで精一杯だ。 「なっ‥‥‥ギル、誰かに見られたら‥‥‥」 「誰かに見られたら、ジョーは困るの?」 「いえ、そうではなくて‥‥‥」  近くには同僚がいるはずだ。いくらなんでも恥ずかしい。それに、公園でキスなんかしてたら目立ってしょうがない‥‥‥と思って周りを見てみると、右横と左斜め前のベンチでキスをしていた。ここってそういう公園だったのか? 「ジョー、アイス溶けちゃうよ」  私は慌ててアイスを食べると、殿下と次の買い物へと向かったのだった。 *****  食べ歩きをしながら買い物をして、気づけば夕方になっていた。 「ジョー、今日は買い物に付き合ってくれてありがとう。おかげで助かったよ」 「ずっと仕事だったから、少しでも気分転換になったのなら、良かったです」 「ジョー、また来ようね」 「えっ‥‥‥はい」  それは、この先もずっとという意味だったのだろうか? そう思いながら殿下を見れば、左手を差し出していた。エスコート? いや、違うな‥‥‥手を繋ぎたいのか?  私が手を繋ぐと、殿下は満足したのか笑顔で帰路へついたのだった。
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