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訓練
次の日の朝。騎士団の朝練に顔を出すと、しばらくして団長が笑顔でこちらへやって来るのが見えた。
「よぉ、ジョゼフ。お前、朝練に毎日来てるのか。偉いな」
「‥‥‥」
私は何でこちらに来たのか察すると、相手にせずトレーニングに没頭した。
「昨日、殿下とデートしたんだってな。楽しかったか?」
「ええ、まあ‥‥‥それなりに」
「どうだ? 婚約はうまく行きそうか?」
「まだ分かりません。あまり話す機会もなくて‥‥‥いい人だっていうのは分かるのですが、恋愛対象となると‥‥‥弟のような気もしてくるし、よく分からないのです」
それに王族としての責務とか考えると、余計に分からなくなってくる。今のところ、仕事が忙しすぎて臣籍降下の話は出ていないらしいし、もし仮に結婚しても、しばらくは王族として城で過ごさなければならないだろう。
「そんなこと言ってると、1ヶ月なんてあっという間なんだから、気づいたら外堀埋められて結婚してました‥‥‥なんてことになりかねないぞ?」
「うっ‥‥‥」
(ぐうの音も出ません。団長、その通りです。今、まさに‥‥‥そうなりそうなんです)
そうは言っても、今の状況はどうしようもないなと思っていた。
「ジョゼフ、お前の気持ちはどうなんだ? 殿下は、お前の気持ちを優先するって言ったんだろ? 自分で考えなきゃ、殿下に失礼だぞ」
そうだ。殿下は私に好意を寄せてくれている‥‥‥それを、私が断れないからって受け入れたって殿下は喜ばないに違いない。じゃなきゃ、「断ってもいい」なんて言うはずないんだから‥‥‥。
「団長、ありがとうございます。もっと、自分の気持ちを考えてみます。自分を大切にするって事は、相手を大切にするって事にもなりますよね‥‥‥きっと」
「おうよ」
私は訓練メニューをひと通りこなすと、護衛チームに合流するために、再び城へ向かったのだった。
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