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私の気持ち
それから10日経っても、殿下に休みはなかった。相変わらず、朝早くから夜遅くまで働いている。こちらから、話し掛ける機会を伺っていたが暇になることは無かった。
このままでは1ヶ月経ってしまう‥‥‥そう思って、殿下と話がしたくて夜中まで待っていた。
隣から物音が聞こえ、殿下が帰ってきたと思い、隣へ繋がる扉をノックしたが返事はなかった。私がベッドに戻って眠ろうとした時、扉は開いた。
「ジョー、どうかした?」
「殿下と話がしたくて‥‥‥待っていました」
「それは‥‥‥婚約のこと?」
「‥‥‥はい」
「いいよ‥‥‥とりあえず、座ろっか」
殿下は私をソファーへ促すと、隣りに座った。
「殿下、あの‥‥‥」
「ギルでしょ?」
「ギル、私は‥‥‥あなたを支えたいと思っています。それが騎士としてなのか、伴侶としてなのか、ずっと分からなかったのです。そして、今も分かりません。ギルとは会ったばかりで、何も分からないことだらけなのに、話す機会もなくて‥‥‥このままでは、ギルにも失礼だと思ったのです」
「‥‥‥私に?」
「愛にはいろんな形があると言っても、こんな中途半端な気持ちのまま、結婚するなんて失礼でしょう?」
「ジョーは、どうしたいの?」
「自分の気持ちを確かめたいと思ったのと‥‥‥か、身体の相性とかは、いいのかなと思ったのと両方です」
私がそう言うと、殿下はため息をつきながら顔に両手を当てていた。
「それ、誘ってるの?」
「いえ、そういう訳では‥‥‥ただ、真剣に考えて結論を出したいと思っています」
「ったく‥‥‥私がどれだけ我慢してると思って‥‥‥」
私は殿下の青い瞳をずっと見ていたが、吸い込まれるように殿下の唇を奪ってしまった。何故、そうしたのかは分からなかったが、『口づけは気持ちよかったな』と思い出していたら、いつの間にかキスをしている自分がいたのだ。
「すいません、つい‥‥‥がっつきました」
「‥‥‥」
「‥‥‥ギル?」
殿下は私をソファーの上に押し倒すと、キスをしていた。
「はぁ‥‥‥」
キスだけで息も絶え絶えになっていると、いつの間にか夜着を脱がされていた。
「えっ、待って‥‥‥今から?」
「だって、ジョーは身体の相性も確かめたいんだろう?」
「いや、でもギルは明日仕事が‥‥‥」
「後で、午後からにしてもらうよ」
「ちょ、ちょっと待って。まだ心の準備が‥‥‥今からだと思わなかったので」
私の心臓は壊れそうなくらいバクバクいっていた。早死にするんじゃなかろうか。
「やっぱり、止める?」
「そんな訳には‥‥‥実は、私こういう経験が無くて‥‥‥今、心臓が爆発しそうなんです」
「爆発?」
私はギルの手を掴むと、自分の心臓の上に手を置いた。私の緊張が少しは分かってもらえただろうか? そう思って殿下を見ると、殿下は苦笑していた。
「私の心臓に手を当ててみてごらん」
私は殿下に手を取られると、殿下の心臓の上辺りに手を持っていかれた。すると、夜着の上からでも分かるくらいに心臓がバクバクいっているのが分かった。
「私も同じ‥‥‥緊張してるんだ。恐いんだよ。自分をさらけ出してジョーに嫌われるのが」
「そんな‥‥‥嫌いになんて、なれないです」
私が上目遣いにそう言うと、殿下は夜着を脱いでいた。
「ごめん、優しくできるか分からないけれど‥‥‥大切にするよ」
殿下に求められるまま2人で抱き合い・・・そのまま夜が更けていったのだった。
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