145人が本棚に入れています
本棚に追加
それから
次の日の朝。目が覚めると身体中が痛かった。身体中に残されたキスマークはもとより、腰が痛くて起き上がれない。
テーブルで朝食を取っていた殿下は、私が起きたことに気がつくと、ベッドまでやって来て私の額に手を当てた。
「具合はどう? ごめんね、昨日は無理させちゃって‥‥‥」
「殿下、私の今日の仕事は‥‥‥」
「大丈夫。私が騎士団長に、直接連絡したから。気にしないで、休んでて大丈夫だよ。」
「ありがとうございます」
騎士団長に何て報告したんだろうという疑問が頭の中を過ぎったが、今はそれどころでは無かった。
「私は仕事だから、そろそろいかなくちゃならないんだけど‥‥‥なるべく早めに帰ってくるよ」
殿下は、私の額にキスをすると部屋から出て行った。昨日の事を思い出して恥ずかしくなり、穴があったら入りたいと思った。
*****
午後になり、起き上がれるようになると遅めの朝食を取りながら、昨日の事を考えていた。
身体の相性は‥‥‥比較しようがないから分からないが、悪くはないと思う。問題は、私と殿下の気持ちだよな‥‥‥。
殿下は、私の事が絵本に出てくる『竜騎士様』に似ているから好きになったと言っていた。本当の私を知って、ガッカリはしていないだろうか?
ガッカリ‥‥‥私は殿下にガッカリされたくなかったのか? そんなに格好よく思われたかったのだろうか‥‥‥ここへ来る前の私は、そんな事を考えただろうか?
今までの出来事を思い返していると、自分自身がすっかり殿下の人となりに魅了されている事に気がついた。今から引き返すのは難しいくらい、もう深みにハマってしまっている様な気さえする。
「私が、殿下を‥‥‥好き?」
言葉に出して言うと恥ずかしくなり、思わず自分の手のひらで顔を覆っていた。
*****
それからの殿下は、責任を感じたのか毎日夕方には帰ってきて一緒に夕食を取っていた。私のシフトも殿下に合わせたのか、昼勤務になっている。
あの日から、殿下は私に触れては来なかった。ただ自分の部屋へ戻るときにはいつも『おやすみのキス』をしてくれるのだが、それが恥ずかしくて、いつも緊張してしまっていた。
いつものようにドアの前まで見送ると、肩に手を置かれ、唇に触れるだけのキスをした。ガチガチに固まっていた私は、キスをされると頬が熱くなるのを感じていた。
「私の事、意識してくれるのは嬉しいけど、そんなカワイイ反応をされてしまうと困ってしまうよ」
殿下はそう言うと、私の腰を引き寄せキスをした。
「おっと‥‥‥大丈夫?」
「‥‥‥はい」
殿下の手を借りると、私はフラつきながらも立ち上がった。
「おやすみなさい、ギル」
「おやすみ、ジョー、いい夢を」
殿下は私の額にキスをすると自分の部屋へ戻っていった。けれど、私は自分を取り戻すために、しばらくソファーで蹲っていたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!