3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
知らないおじいさんとおばあさんが、ショーケースの中のドーナツを楽しそうに選んでいる。
背の高い店員は、客と談笑していた。友達同士なのだろうか?客の方は手首に包帯を巻いていた。
さっきの女の人達は、まだおしゃべり。
急に自分だけが透明になった気がした。
ここは俺以外の人達だけの世界。
まるで誰にも俺のことが見えてないみたい。
馬鹿みたいな考えはやめよう。
どれだけ憂鬱でも、自殺するような勇気はないんだ。それよりカフェオレのおかわりでもしようか?
「おかわりいかがですか?」
先ほど客と談笑していた店員が、ちょうど保温ポットを手に持ってやってきた。
背が高い割に優しい声色。
「じゃあ下さい」
新しいカップにカフェオレをついでくれた。
「ごゆっくり」
ありがとうございます。のひと言も言えない。
ありがたかったのに、感じの悪い客だと思われただろうな。
また憂鬱。
お花見の話をしていた女の人たちが立ち上がって、店を出ていった。
静かになるな。と思ったのに、なぜか1人だけ戻ってきて俺のところへ来た。
「タクミ君だよね?私のことわかるかな?お母さんの友達の森本です」
びっくりした。母さんの友達だったなんてわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!