消えたいシグナル

4/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「お葬式でちょっとご挨拶したんだけど、覚えてないよね。忙しかったものね」 「ああ、はい」 「声をかけない方がいいかと思ったんだけど、元気にしてるか気になってしまって」 「はい」 「なんて言葉をかけていいかわからないけど、元気を出してね」 それじゃあ、ごめんねと言って女の人は急ぎ足で店から出ていった。 母さんの友達だなんて全然わからなかった。全然覚えていなかった。 でもあの人は、俺を覚えていてくれたんだ。 おかわりしたカフェオレを一口飲んでみる、やはり美味しくない。だけど暖かい。 俺はまだ透明になってはいないらしかった。 まだ消えてはいないらしかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!