第十一話『スミアリアのペンダント』

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 アンゴットが何かを言うまで私はそのままの体勢で彼に謝罪の姿勢を見せる。するとしばらくの後に彼は声を上げた。 「遺憾ではあるが、信じる以外にあるまい」 「……! ありがとうございます!!」  先程まで物凄い殺気を放っていたあのアンゴットが何故私を容易に信じてくれたのかは理解していた。  このスミアリアのペンダント一つにそんな効果があるのかと他者からすればそう疑問に思うかもしれない。  だがこのペンダントには裏設定がある。  私は小説の現在入手不可能な初回限定特典でその情報を知っていたのだ。そしてその事をエビも知っていたのだろう。  私は知ってはいたものの、混乱状態に陥っていたせいかすっかりその事に気づく事が出来ずにいたが、エビとスミアリアの一言でようやく今回ペンダントを渡された真の意味を理解できていた。  アンゴットの渡したペンダントは高価な価値のある貴重なルビーからできたペンダントである事には変わりない。それ以外は特に特別な意味を持たないものだった。  しかしスミアリアには不思議な力がある。彼女が愛しのアンゴットから貰ったルビーのペンダントはスミアリアが受け取った瞬間にある力を宿していた。  それはアンゴットとスミアリアにしか手にできない結界のような力である。  スミアリアは意識的にそれらをおこなったのではなく、無意識にその力を発動させていた。当時、アンゴットに貰ったペンダントが嬉しくてリリーラにも見せようと手渡そうとしたのにそれができなかったエピソードも特典の中には描かれていた。  それは、スミアリアが心の底からその特別なペンダントを、アンゴットとスミアリアの二人にしか手に取る事ができない特別なものとして無意識に思っていたという彼女の心を暗示していたのだ。  つまりスミアリアの強い独占欲を表している。スミアリアの聖女の力が本格的に覚醒するのは物語の終盤ではあるが、それでもこのような無意識の能力は物語の序盤から何度か起きている現象だった。
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