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すると途端にノック音が鳴り響いた。私は驚きで肩を跳ねらせ、思わず息を潜める。もしかしたらアンゴットかもしれないと警戒をしていた。
「スミアリア、起きているかい? 僕だよアンゴットだ」
やはりそうだ。私は今の自分の状況を確認する。今、地べたに座りながら日記を読み漁っているこの姿は、とても華麗なスミアリアに似合わないだろう。
こんな姿をアンゴットが見てしまえば、真っ先に怪しまれるに違いない。
先程まで本当はアンゴットに全てを打ち明けて、自分はスミアリアではないのだと説明しようと思っている自分がいた。
だがそれはあまりにもリスクが高く、最悪スミアリアに扮した悪人だと判定され処刑されてしまうかもしれない。スミアリアの偽物だと思われればそれだけ危険が高いのだ。
アンゴットは溺愛するスミアリアの為なら非情な人間にもなれるそんな王子だった。
そんなところが推しCPのファンとしても最高に萌えるポイントであるのだが、今はまた状況が違う。
(今殺されるのはスミアリアの体が死ぬことになる)
それは推しCPの一生の地獄を意味する。そんな事は絶対に許されない。私が、いやだ。
(とりあえず、名案を思いつくまでは、スミアリアのフリをしよう)
非常に選びたくない選択肢が二つ並び、私は仕方なく死を避けられる方の道を選ぶ。死んだらどうにもできない。それならば、本当に苦しい事だが演技でもなんでもしてみせよう。
推しCPだけは失いたくないのだから。
第一話『状況整理』終
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