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私は彼のその小馬鹿にしてきたような態度に不満を持ちつつも、言われている事はその通りであるため大人しくベッドへ戻り始めた。
「ねえエビ」
ベッドに入り、布団を肩のあたりまで持ち上げた私は仰向けになりながらエビに声を発した。これくらいの声量なら部屋の外で護衛してくれている警備隊にも聞かれる事はない筈だ。するとエビは何だと声を返す。私はそのまま彼に思っていた事を伝えてみた。
「私が寝ている間に奇襲にあったら、守ってね。スミアリアの体は絶対守りたいから」
たかがエビの彼に何ができるのだろうと自分でも思う。
だが千里眼を持つ彼であれば何かしらの方法で私の憑依したスミアリアを守ってくれるだろうとそう思ったのだ。いや、千里眼などなくても、エビであればそうしてくれるような、そんな不思議な予感をなぜか私は彼に感じていた。
「善処はする。早く寝ろ」
「……ふはっ、お父さんみたい」
自分の父親の記憶にそのような事を言われた経験はなかったが、フィクションの世界ではよく聞く台詞だ。そうして私はエビにそんな感想を抱きながらゆっくりと瞼を閉じた。
第十話『策を講じる』終
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