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第十一話『スミアリアのペンダント』
「私の名はスミアリア=エリーモアントと申します。はじめましてミアレ」
ハッと意識を取り戻すとそこは私が眠っていたはずのベッドの上ではなかった。
声のする方へ顔を向けるとそこには確かにスミアリア本人の姿があり、私の姿もいつの間にか前世の高原真彩錬の姿に戻っている。
ここはどこなのかという疑問よりも目の前に確かに存在しているスミアリアに思考は持っていかれていた。
「スミアリア!?」
「はい、スミアリアで御座います」
私が勢いよく彼女に問いかけるとスミアリアと名乗るその可憐な美少女は、微笑みながらこちらを見返した。
彼女の藍鼠色の澄んだ美しい瞳はこちらが思わず目を逸らしてしまう程の純粋な目を宿しており、私は生のスミアリアを客観的な視点から見られた事に感動を覚えた。
「ほ、本物……?」
「ええ、正真正銘、本物のスミアリアに御座います」
そう言ってニコリと柔らかな笑みを再び見せてくるスミアリアはどう見ても私がよく知っている優しくて穏やかで心が澄んでいるそんな女の子だ。
私は思わずうるっと涙が溢れそうになるのを実感する。本物のスミアリアだ。
「ほ、本当に生きてたんだね……良かった! アンゴットも喜ぶよ!!!」
私は嬉しさのあまり感極まって彼女に大きな声を発した。
スミアリアは終始柔らかな笑みを放ち、こちらと意思疎通を交わしてくれている。私は一歩踏み出し、先程よりもスミアリアに近づくと彼女は再び口を開く。
「ミアレ、私も貴女にお会いできて嬉しいです」
「あ……私の名前」
そこで私は一番最初にスミアリアが私の名前を言っていた事を思い出す。なぜ知っているのかは分からないが、スミアリアは私の存在を確信した様子で話してきている。彼女も何かを知っているのだろうか。
するとスミアリアはこんな言葉を口にした。
「申し訳ありません。今の私に出来る事はこれくらいしかなくて」
そう言ってスミアリアは首にかけていたルビーのペンダントを外すと私に近付き首にかけ始める。
私はされるがままに彼女にペンダントをかけられると「これは?」と声に出す。しかしそこで気がついた。このペンダントはアンゴットが小説の中でスミアリアにプレゼントした一点ものの特注品である事を。
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