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気付いた私は焦ってペンダントを外し、スミアリアに返却しようと手を伸ばす。
「だっだめだよ!!! これはスミアリアが持ってなきゃ!!!」
そう言ってペンダントを何度もスミアリアの方へ差し出すが、彼女がそれを受け取る様子はなく、彼女は微笑みながらこちらに視線を戻した。
「預かっていて欲しいのです。そちらがあれば、アンゴも貴女を信用してくれましょう。何故ならそちらは……」
「アンゴットがスミアリアの十九歳の誕生日にプレゼントしたものだから……」
私はスミアリアが言わんとしている事をボソリと口に出した。
このペンダントはアンゴットの愛のペンダントだ。スミアリアただ一人のためだけにアンゴットが危険な山脈にまで出向き、己自身で発掘してきたルビーから作られている。
「ええ、そうです。本当によくご存じなのですね。光栄です」
スミアリアは本当に嬉しそうに頬を僅かに染めて笑みを溢す。彼女が今、どこにいるのか聞かねばならない。私はスミアリアに率直に問い掛けた。
「ねえ今あなたはどこにいるの!? 私がこの体を離れられるまで一ヶ月はかかるけど、その時スミアリアはちゃんとこの体に戻ってこられる!?」
少し焦っているせいか、早口になってしまう。私はスミアリアから目を離さずそう彼女に問いかけると、スミアリアはあくまでも冷静に、いや、原作通りの淑女らしく気品のある姿勢でこう答えた。
「そのために貴女に接触させていただいたのです。アンゴに会う事は今の私には出来ません。私の体にいらっしゃる貴女だからこそ、こうしてお会いする事が出来たのです」
そう言ってニコリと微笑むと私の両手を優しい手つきで握ってきた。
「ミアレ、貴女の事を信じております。私は貴女の事をある方から聞いているのですよ」
「ある方?」
「ごめんなさい。今は何も言えないの。今回は貴女にペンダントだけでもお渡ししたかったのよ。アンゴをどうか、宜しくね。それじゃあご機嫌よう」
スミアリアはそう言うと霧のようにスウッと私の視界から消えていく。咄嗟に手を伸ばすが、彼女に届くことはなく、私は気が付けばベッドの上で目を覚ましていた。
「緊急事態だ。起きろ」
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