第十一話『スミアリアのペンダント』

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 意識を取り戻してすぐにエビの声が耳に入ってくる。私は勢いよく起き上がると自身の首元にペンダントがかけられている事に気が付いた。そっとそれに手を添えながらスミアリアの記憶を思い返していると「おい」と言う声が再び耳に入ってくる。 「時間がないぞ。よく聞け」 「な、何急に……」  私はエビのいつになく真面目な声色にたじろいだ。エビはいつも余裕そうなのに、今回は真剣そうな言葉遣いと声音をしていたからだ。  緊張しながらもスミアリアのペンダントをぎゅっと握りしめ、エビに言葉の意味を問い掛けると彼はすぐに声を発してきた。 「アンゴットが来る。お前の足の仮病、バレたな」 「えっ!?」 「アンゴットの疑い深い性格が働き過ぎたようだ。まあ、スミアリアへの狂愛が強すぎたという事だろうな」  私は唐突な情報に身構えながらも、しかし心は正直なもので、喜んでいる場合ではないのに嬉しいと心の底からそう思っている自分がいた。  アンゴットが仮病を見抜けたのは紛れもないスミアリアへの愛が強すぎたが故の行動があったからだ。  どのようにして分かったのかは不明だが、彼は私を信用しきれておらず、スミアリアの危機を感じ取り入念な捜査を続けていたのだろう。  この後の展開を考えると恐ろしいのは事実だが、それでもアンゴットのスミアリアへの強い愛情を再び供給された事が私にはご褒美となっていた。 「何だお前、ニヤニヤして気持ち悪いな。どうやらバレても問題がないようだ」 「いや、失礼すぎでしょ。ていうか千里眼持ってるんだから私が喜んでいる理由は分かるよね? バレたのは正直困ってるけど、推しCP補給ができたのは嬉しいと言うかさ」  私が頬を掻きながらそう言うと、エビはその言葉を無視してとんでもない台詞を繰り出してきた。 「ちなみにあと五分もしない内に奴は来るぞ」 「えっ!!!!!!!」
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