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しかしそこで私は先程エビが言っていたペンダントに意識が向く。そして気が付いた。スミアリアが先程夢の中で言っていた事を。そうか、そうだった。
「王子……こちらを」
そう言って私がアンゴットに見せたのは首に飾られていたスミアリアのペンダントだ。今この瞬間までペンダントを片手で握っていた私は、アンゴットの目にこのペンダントが写っていない事を知っていた。
そのため今、この場で初めて彼にペンダントをお披露目した事になる。
アンゴットは案の定、そのペンダントを目にして大きく目を見開くと、動揺の色を見せ始めた。
「お前……これをどこで」
アンゴットは困惑しながらもそう口にする。
「スミアリアに託されました。信じ難いかもしれませんが、スミアリアは夢の中で私にこちらを渡してくれたのです」
「何だと……?」
アンゴットの困惑は続いた。
私が口にすることは何から何まで摩訶不思議で証明できないような事ばかりだ。それは私自身もよく知っているし疑われる意味もよく分かる。
だがそれでも起きた事実を彼に伝える事を諦めたいとは思わない。全ては推しCPの為なのだ。私はそのまま言葉を続けた。
「王子をどうか宜しくと、スミアリアは言ってました」
スミアリアの姿が見えなくなる直前に、彼女は確かにそう口にしていた。あれには私も推しCPへの尊さで胸がジンと熱くなっていた。
スミアリアはあのような訳のわからない状況下においても、アンゴットの心配をして、藁にもすがる思いで私にそれを託そうとしているのだとそう理解できたからだ。スミアリアのアンゴットへの愛も、私は好きだった。
「スミアリアはこちらを見せれば、王子も私を信用するだろうとそう言ってました。私に会えたのは他でもない私が彼女の体に憑依した身であるからだとも言っていました」
そう言って王子に頭を下げた。
「足の怪我の完治を黙っていた事は申し訳ありません。私にも言えない事があるのは事実です。ですが、私は本当に貴方の味方でスミアリアが戻る事を願っています」
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