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数十分が経過するとスミアリアの引き出しにそれは見つかった。彼女の日記帳は丁寧で可愛らしい文字で『日記』と書かれており、推しCPの女の子の生の文字を見られた事に感動を覚える。
(いつもこの字を見て、アンゴットはどんな感想を抱いてるんだろう)
妄想を始めると途端に自分の口元がニヤける。私はそのままスミアリアとアンゴットの妄想に時間を費やししかし途中でそれどころではない事を思い出した。
「馬鹿すぎる……妄想は寝る時っていつも決めてたのに」
私は止まらない妄想を一旦頭から追い出し、そのままスミアリアの日記帳を開いた。
『五百七十二年十一月十日』
そこで私は一番最新の日付を確認した。この小説の時代設定は私の暮らしていた現代とは違い、時代の計算が特殊だ。大正も昭和も平成もないのである。年号はなく、西暦だけで決められた世界なのだ。
スミアリアの日記を見るに、今の時代は原作がちょうど始まった時間軸であった。私はページを捲り、スミアリアの日記を読んでいく。
『本日はアンゴが私を抱き上げました。とても恥ずかしかったのですけれど恋仲だからと彼は微笑んでいたわ。とても格好良かった』
「うわあああああありがとうございます」
私は思わず感謝した。まさか推しCPの萌えエピソードを推しCPの女の子の日記で見ることになるとは思いもしなかったのだ。
(最高なんだけど……!!! 他にももっと書いてあるんじゃ……!!!!!!)
私は再び興奮しかけた自分に気が付き、我に返る。こんな事をしている場合ではない。早くしないといつアンゴットがやってくるか分からないのだ。
「落ち着け私……」
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