不如帰の卵を育む

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ニホンミツバチよりも多くの花蜜を集める能力が歓迎され、外来種として最も成功している昆虫だろう。早春から咲き出すイヌフグリに留まっている。 最早祖先の由来さえ定かでないほどに飼い慣らされた蚕に比べたら、自然界でも逞しく生き延びられて、日本の環境でも繁栄している昆虫だ。 それを不自然と思われない程度には。 「地球環境に順応し、適応できたものはいないとされていますよね」 そもそも食性から違う外来種では、適応のチャンスは少ない。 それが星外系からならば、なおさら生き延びるチャンスは少なくなる。 「まさか、どこかの星系からの動植物が」 ハッと気付いて問うと、軽く首を横に振られて否定された。 もし、入ってきているならば大問題に発展する。 特定外来種として忌避される動植物は、本来の繁殖地ならば競合し、または天敵となる存在があるからこそ抑えられていた特性が悪い方向に発現するから嫌われるのだ。 元よりある原生生物を駆逐し、生息の場、繁殖の場所を奪い取り、土壌と言う最も変化し難いと思われる根底からさえも変えてしまうが故に。 日本産のミミズが、その旺盛な食欲で薄い腐葉土の層を食い尽くし、結果的にさらに痩せた土地を作り上げた例もある。日本でなら土壌を耕し豊かにする生き物とされるのにだ。
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