不如帰の卵を育む

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「ミツバチの様に、人にとって利点も多くコントロールし易いと見えても、今は最低数十年の期間を設けてテストをするのが当たり前だからね」 知っている。 お陰で太陽系外の惑星から動植物が持ち込まれる機会は少なく、地球だけは地球内の環境を他惑星の動植物に侵されていない。 人が開拓地とした太陽系外の惑星がいくつも地球産の動植物に侵されていても。 テラフォーミングとは、そう言う事だ。 「君は、ガーデナーとして、一研究者として、地球外の生命にも興味があるね」 臀部のポケットに差し込まれた彼の手の上に、小さな包みがあった。 「二十年のテストでは、おそらく繁栄はしないとされるミミックの植物であり動物だ」 言葉の意味をほとんど咀嚼しないまま、つられる様に伸ばした私の手に包みが握らされる。 「ミミックの生命は、条件次第で植物の様にも動物の様にも振る舞う。粘菌に近いかな。とても興味深い生態だったが、長く留まれない私では研究を完成できなくてね」 最初期の開拓民であり続ける彼は、先鞭を付けるのが人類から担わされた役目だ。 もう大丈夫と分かったら、次の惑星へと旅立つのが使命であり、命の潰えぬ限りほぼ同じ作業を繰り返して行く宿命を負った、誰よりも自由に見えて最も不自由な人。 「真似っこが好きなんだよ」
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