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「2015年に発見されたK2―18b。ハビタブル・ゾーンに存在し水を持つ惑星はそれを皮切りに多く見つかり、私達が植民地星として開拓に入った」
不意に始まる開拓の歴史の陰には、当然の如く苦労の連続がある。
だが彼は苦労話ではなく、他惑星の動植物の話をし始めた。
きっと似た方面への興味を持ち、同じ趣味を語れる友だと認識されたのだろう。
私自身、妻にさえ仕事への理解を持ってもらえなかったからか、彼とのとりとめない話の応酬が楽しくなっていた所だ。
春先とは言え、まだ肌寒い風も吹く中、二人で小さな庭をそぞろ歩いた。
「一番面白かったのは、ミミックとニック・ネームを付けた星だよ」
「擬態植物の名前で、一時期地球でも話題になったそうですね。残念な事に地球以外にも人の生活圈が増えてから入って来る情報量が多すぎて、人は誰も彼も興味のある部分か、流行りに乗るだけです。私も少しの情報しか覚えていません」
しゃがんだ相手の膝元には小さなイヌフグリの花がある。
雑草の一言で片付けられる草花ではあるが、愛らしい青の花弁の美しさと名前のインパクトで覚える者も多い花。
指先で青に触れたその人は、わざわざ血筋を探して我が家に訪れた異邦人だ。
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