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1 チャミル、会長就任
バァアアアアン――っ。
木製扉が勢いよく開かれた。
壁と衝突する音が響きわたり、大聖堂の荘厳な空気が震える中、少年が部屋から飛び出してくる。
「っととと、うわっぷ――っ」
少年は部屋向かいの壁にぶつかり顔を歪ますも、すぐさま足に力を入れ、大理石の床を蹴って走り出した。
オリーブ色のくせっ毛をペショペショと振り乱し、手と足を大きく前後に動かして、大理石の廊下を一心不乱に駆けていく。
その背中に、低くしわがれた怒号が投げられた。
「待たんか、チャミル!」
黒いローブをまとった老人が、必死の形相で叫び、少年を追いかける。
「この師匠が待てと言うとるに、ぜえ、はぁ、チャミルよ! これ、止まらんかっ!」
少年は無視して走り続ける。
あの老人につかまったら命はないとばかりに顔を恐怖で引きつらせながら、全力で走っている。
大理石の廊下を走って走って走って、少年がもう少しで外へ出られるというところで、銀色の鎧が少年の前に立ちはだかった。
「うわあっ」
「押さえつけよ!」
ガシャンっ。
老人に忠実な鎧が、少年を床に倒し拘束した。
「ぅ、離せよっ、いやだぁあああ!」
少年は半泣きになりながら、鎧の下でじたばたともがいている。
「はあ……やれやれ。もっと年寄りを労わっておくれ」
老人が少年の顔の横に立った。
追いつかれてしまった。
つかまってしまった。
もう逃げられない。
老人の影の中で、少年の顔は絶望に染まり、両目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「うう、うえーんっ!」
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