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「泣きたいのはこっちじゃ、チャミルよ」
老人は、泣きわめく少年の傍らに片膝を立てて座り込み、肩を上下させながら呼吸を整えた。
「ふぅ。さて、鎧よ。チャミルを座らせてやってくれんかのう」
ガチャ、ガチャン。
鎧が少年の上半身を起こし、老人の前に座らせた。
「まずはその頬の涙を拭かねばな」
少年はいやいやと顔を横に振った。
それはもう、ブンブンと振った。
老人が「やれやれ」と呆れながら鎧に視線を向けると、鎧が少年の顎を掴んで動きを封じた。
「チャミルよ。顎を砕かれたくなければ、大人しくすることじゃ」
「ふぅっ……ぐすん」
少年は捨てられた子犬のような目で老人を見つめた。顔は、涙と鼻水でぐしょぐしょだ。
老人はハンカチで少年の顔を拭った。
拭っても拭っても、少年の目からは涙が溢れ出てくる。
「しかたないのう」
老人はローブの左袖で少年の目を覆い、涙をせき止めた。
もう片方の袖で少年の頬を拭いてから、骨ばったシワシワの手で少年の左頬に触れる。
ぽわり。青い光が、老人の右手から注がれた。
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