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亡霊騎士団
アルフィーはフロントガラスに向かって叫んだ。
ジャックとアイラが目をやると、高々と上がった馬の前足がガラスを踏みつけ様としていた。
「ウアアアア――ッ!!」
「キャアアア――ッ!!」
「!?」
アルフィーとアイラが恐怖の叫びを上げる中、ジャックは急ぐにギアをバックに入れアクセルを強く踏み込んだ。
泥でタイヤが二回、三回とスタックを繰り返した後、車は猛スピードで後退して行く。
高く上がっていた馬の前足が、間一髪車の退いた後の泥を踏みつけた。
五メートル程後退した所で車が止まる。
「なにッ何よ今の!?何で馬がッ!」
「亡霊騎士だよッ!甲冑着てた!!」
「二人共落ち着けッ!!」
パニック状態のアイラとアルフィーをジャックが宥めようとしていると……
「また来たあッ!!」
アイラが前を見て叫んだ。
ヘッドライトに亡霊騎士が浮かび上がる。
ジャックは急いでライトを消した。
「何でッ!?何で消すのよッ!?」
「ライト点けて神父様ッ!!」
「落ち着けって!奴はッ」
――ガアンッ!!
「ウワアア――ッ!?」
アルフィーが叫ぶ。
後部座席の窓ガラスを亡霊騎士が頭で叩いていたからだ。アルフィーは叩かれた窓を懐中電灯で照らし距離を取る。
震える光の先で亡霊騎士は数を増やし、叩かれた窓ガラスにヒビが入った。
「青年ッ懐中電灯を消せ!奴らが動けるのは光の中だけだッ!」
――ガアンッ!!
「アアア――ッ!!」
アルフィーは恐怖でジャックの言葉が聞こえていなかった。
「青年光だ!消せッ!!」
「アルフィーッ!!」
アイラはアルフィーから懐中電灯を奪い取った。
その光に助手席の窓ガラスも叩かれる。
「ッ!?」
アイラは急いで懐中電灯の光を消すと、亡霊騎士も姿を消した。
「………………」
「………………」
「ゥウ……フゥッ……」
暗闇の中、アルフィーの震えた泣き声だけが溢れる。
「もう大丈夫だ青年」
ジャックは後部座席へ振り返りアルフィーの頭を撫でた。
瞬間、ヘッドライトがハイビームで点灯した。
「!?」
「!?」
「!?」
強い光の中、無数の亡霊騎士が整列を成していた。
「ジャックッ!?」
「何で点けるの神父様ッ!!」
「俺じゃないッ!」
ジャックはライトを消そうとしたが車は言う事を聞かない。
その間も亡霊騎士は不気味に甲冑を鳴らしながら車に近付いて来る。
「クッソ!二人共しっかり捕まってろッ!!」
「!?」
「!?」
ジャックはギアをドライブに戻し全力でアクセルを踏み込んだ。
しかしタイヤは再び泥でスタックを繰り返し前進出来ないでいる。
「ジャック来てる早くッ!!」
「早く早く神父様ッ!!」
亡霊騎士がバンパーに乗り上がった。
「ジャックッ!!」
「神父様ッ!!」
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